1分で読める創作小説2025

菜の花のおしたし

第1話 梅の花

「なんやろ?これ?」

体のあちこちに赤い斑点がある。

虫やろか?もう!蚊帳のつり方があかんかったんやわ。


「ちょっと、ちょっとぉ、おまつ〜はどこなん?」

「おはようさんでございます。こいさん。」

「おはようさんやあらしまへん。うちの体を見とうみ?赤い斑点ありまっしゃろ?

寝間の支度したんはあんたやろ?蚊帳に蚊が入ってきたんやわ。まあ、蚊帳も満足につられへんてなぁ、、、。あんたさん、うちで何年奉公してはんの?」

「すんまへん、こいさん。かゆおますか?痛おますか?」

「触りな!あんたの顔は見たないわ。おたか〜、おたか〜はいてへんの!!」


「へぇ〜、こいさん、どないしはりましたか?」

「おたか、見ておくれやす。おまつが蚊帳をつるのに手を抜かはってなぁ。うちの体はこないになってしまもたんよ。」

「まぁ!こいさんの体に虫刺されのあとが、。すんまへん。これ!おまつ、こいさんに手ついて謝りやす!!」

「すんまへん、すんまへん。こいさん、お許しください。」

「さぁ、どないしまひょかいな。なぁ、おたか、今までこんな女子衆いてへんかったわね。お父はんに言うて辞めさせてもらかぁ、、。」

「こいさん、それだけはお許しください。おまつは大雨で家も家族も流されて天涯孤独の身でございます。お店を出されても頼るところがありまへんのです。」

「おたか!!女子衆頭や言うてうちに説教しまんのか?あんたも偉ろうなりはったもんや。」

「差し出がましいことを言いました。こいさん、すんまへん、、、。」


おまつはお店を追い出される事になった。その夜の事、丁稚が店の夜廻りをしてたら

厠でおまつは首吊りで見つかった。

お店は世間体を気にしてこっそりと無縁仏として寺に渡した。


その後や、こいさんがお熱あげてた歌舞伎役者が梅毒で頭がおかしくなったのは。


毎晩、毎晩、こいさんの夢枕におまつが出るようになった。

「こいさんの体は梅の花が咲いてただけやったんですねぇ、、。」





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1分で読める創作小説2025 菜の花のおしたし @kumi4920

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