概要
四年前、仏師である志堂の妾となった祝織は、自身の境遇に疑問を持ちながら日々を過ごしていた。
なぜ自分が選ばれたのか、答えてくれる者は誰もいない。
──祝織が自分で選んだのなら、俺は何も言えないよ。
──志堂様になら、あなたを任せられるわ。
母も、妾になる前に交際していた嘉明も、何も聞かずに祝織を送り出した。
そんな中、友人の浩介が死亡する。
噂では喉を掻きむしり、苦しみ藻掻いた末に、口から夥しい数の虫を吐き出して死んだ──と。
──もしかすれば、祟りに見せかけた殺人かもしれない。
浩介の葬儀で出会った刑事、並木の言葉。疑心暗鬼になりながらも、並木に協力する祝織だったが……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!見えない禁忌と絡みつく陰惨たる邪慾。狂気を超えたホラーに耐えられない。
この物語はたびたび登場する虫――それも常軌を逸した特異的な描写――が可能とする穢欲が臭い立つ湿度の高い陰惨たるホラーだ。
病死とされた肉親の死因。忌女の祟りが呼び寄せる禍痕の痣。口から湧いて出る虫がなんとも悍ましい。
その死の秘められた謎に興味を加速させる展開が憎いほど巧みと言わざるを得ない。
それを可能にする村を支配する力の存在が見えない形で頭上を覆っているような感覚。
謎が謎を呼ぶ極度に閉塞感のあるこの村で一体、何が起きているのか。
何が嘘で何が真実なのか……
誰が敵で誰が味方なのか……
恐怖と、混乱と、狂気と……もち上がる臓腑に何回吐いたかも分からない胃液の中から這い出てきた蠢…続きを読む - ★★★ Excellent!!!這い寄るは、おぞましさ
因習というものは、外から見れば禍々しくとも、内にいれば「そういうもの」となる。
初手から、ああこういうものなのだという空気感を突きつけられ、恐怖しながらも真実が知りたくなる。おそらく、この作品はそういうものだったのだろうと思います。
主人公を取り巻く環境、一言で表すのならば「おぞましい」になるのだろうが、きっとこの言葉だけでは不足だろう。
読んでいくにつれ、状況は二転三転していきます。誰を信じるのか、何が真実なのか、きっとこうだと思ったものはひっくり返され、主人公と共に読者も渦の中に叩き込まれていく。
だからこそ、知りたくなるのだ。これが、どのようなものなのか。
ぞくりとするおぞましさは…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ねとり、じめり、とした因習村ホラーがここにあります。
始まりからすごいです。
ねとり、じめり、とした空気が読者に伝わる表現力の高さ。読み始めてすぐに物語に引き込まれていきました。
主人公への仕打ち、彼女を取り巻く環境の酷さ、不可解な謎、そして虫。
けれど、そういうものなのです。この村では。
だから、誰も彼女に手を差し伸べない。助けない。
因習の恐ろしさに、ぞくりと背筋に悪寒が走るほどです。
何度も主人公には危機が訪れ、騙されたりもして。
誰を信じていいのか、誰を信じてはいけないのか。主人公と一緒に読者もわからなくなってきます。
それだけ臨場感があり、どっぷりと物語に浸かることができるという、満足度の高い作品となっています。
皆様もぜひ、読…続きを読む