概要
命を積む器を、今日も磨く。
あらすじ
回天《かいてん》——太平洋戦争末期、日本海軍が実戦投入した人間魚雷。全長約十五メートル、直径一メートルの筒に一人が乗り込み、操縦して敵艦に体当たりする。脱出装置はない。搭乗すれば、生きて戻る手段はなかった。
山口県・大津島《おおつしま》の基地に、一人の老整備兵《ろうせいびへい》が着任する。藤堂幸造《とうどうこうぞう》、四十年間、鉄と向き合ってきた職工《しょっこう》。彼の仕事は、この兵器を、寸分の狂いもなく整えることだった。
なぜ死ぬのか。それに意味はあるのか——幸造は、若い搭乗員たちのその問いに、一度も答えない。答える言葉を、彼は持っていなかった。
彼が持っていたのは、継ぎ目を確かめる指先と、軸受けの歪みを直す手だけだった。
そして夜ごと、古い手帳に、若者たちが遺した小さな言葉を書
回天《かいてん》——太平洋戦争末期、日本海軍が実戦投入した人間魚雷。全長約十五メートル、直径一メートルの筒に一人が乗り込み、操縦して敵艦に体当たりする。脱出装置はない。搭乗すれば、生きて戻る手段はなかった。
山口県・大津島《おおつしま》の基地に、一人の老整備兵《ろうせいびへい》が着任する。藤堂幸造《とうどうこうぞう》、四十年間、鉄と向き合ってきた職工《しょっこう》。彼の仕事は、この兵器を、寸分の狂いもなく整えることだった。
なぜ死ぬのか。それに意味はあるのか——幸造は、若い搭乗員たちのその問いに、一度も答えない。答える言葉を、彼は持っていなかった。
彼が持っていたのは、継ぎ目を確かめる指先と、軸受けの歪みを直す手だけだった。
そして夜ごと、古い手帳に、若者たちが遺した小さな言葉を書
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