第6話迷子
どれくらいの時間が過ぎただろう?数十分かそれとも案外数秒か、二人はイザベラの日記をずっと眺めていた。文が変わることはないのに。
すると、オレガノが図書館に来た。
「話は終わった感じ?」
「終わったよ。彼女達が受け入れるにはまだ時間がいるだろうけど」
フェンネルもオレガノも冷静だった。もう、受け入れたのか。
「…受け入れるもなにもそれが事実。ただそれけだよ?ボクには君達が心傷する理由がわからないよ」
「オレガノ…」
「何それ、あたし達の村が燃やされたのは仕方がないとでも言うのっ!?」
ローリエが感情的になって大声で怒鳴る。
すると、さっきの落ち着きが嘘のようにオレガノは顔を真っ赤にした。
「仕方がないわけないだろ!」
反発する様に声を出す。
「ちょっと考えれば分かることだったんだ。それなのに、他人にされた存在定義に何の疑問も持たずに、のうのうと過ごしてきた自分に腹が立ってしょうがない!村だって燃えなかったかもしれない!誰一人死ななかったかもしれない!本当にバカだよ村の人間も、お前らも、ボクも」
オレガノは嫌味なやつだけど、村を、そこに住む人達を大切にしていた。冷静そうに見えても、完全ではなかったようだ。
「二人とも落ち着いて、オレガノも疲れただろうし部屋に戻ろう」
「…そうする」
そう言って、オレガノは部屋を出ていった。
フェンネルは申し訳なさそうにして
「悪気はないから許してあげて」と言った。
「あたしもカッとなり過ぎた。ごめん」
とローリエも俯いて言った。
「後で、二人の部屋も案内するから待っててね。僕はちょっとオレガノのところに行ってくるから」
そう言い残して、フェンネルもまた部屋を出ていく。弟を心配する兄の背中だった。
フェンネルはどうせ部屋には帰らず庭にでも居るのだろうと思い、そこへ向かった。予想は的中し、草むらにうずくまっているオレガノを見つけた。弟のことを少しでも理解できているようで誇らしくもあったが、それはそれだけオレガノが庭でうずくまり、嫌な思いをしている事の現れでもあった。
小さな頃からプライドが強く、間違いを指摘されても頑なに認めようとしなかった子が「それが事実」だなんて簡単に言えるものでもない。彼なりに成長しようとしているのだろうか。兄として嬉しくはあるが、その為に無理はしないで欲しい。人は簡単に変われないのだから。
「オレガノずっとここに居ても体が冷えてしまうよ」
「……」
やはり無視か。これも昔から変わってないらしい。拗ねているのだろうが、本人にそれを言うと更に怒らせてしまう、どうしたものか。
とりあえず、隣に座り頭を撫でてみる。
「子供扱いすんなよっ」
しおれた声だが反応してくれた。一応、効果はあったようだ。
「今いる4人の中じゃ1番年下だろ?それに僕からしたらいつまでもかわいい弟だよ、お前は」
「あっそ」
反応がかわいくない…。まぁ、そんなとこも含めて僕はオレガノを愛しているのだが。
「イリス達に真実を告げることをよく思わなかったのは彼女達が簡単に受け入れられずに苦しむと思ったからなんじゃない?お前は本当に優しい子だよ」
「買い被りすぎ、ボクのこと好きすぎておかしな妄想交じってるんじゃないの?」
そんな事ないと思うんだけどな…?
「でもね、今こうしてうずくまっているのは自分の為にしか見えないよ。恥ずかしい自分を隠すため。他人当たることも褒められたものじゃない。自分以外に苦しんでる人間がいて安心してるでしょ」
驚いた顔をして、またうずくまった。図星か。でもきっと、それも含めてオレガノは怒っているだろう。自分が許せなくなっている。
「オレガノが受け入れるべきはまず自分自身だよ」
また、無反応だ。僕が話したい事も尽きてきた。ずっとそばにいても鬱陶しいと思われるだけだろう。すると、庭への入口が開き足音が近づいてきた。そろそろ頃合いかな?
すると予想通りそこにイリスとローリエが現れた。
「やっぱり彼女達はお前が思うよりも強いよ」
フェンネルは図書館を出る前
「あっそうだ」と、ある事を思いつきイリスとローリエに告げた。
「落ち着いてからでいいから、この後、庭に来て。入口はここを出て左ね」
二人が来るのにそこまで時間がかかるとは思わなかった。そして、思った通りここへ来てくれた。
「残念だけど、オレガノが思うほど私は弱くないよ」
「あたしもね」
二人が来ることが以外だったのかまたもや驚いた顔をしていた。
「何?兄さんは惨めなボクを笑いたいの?」
「僕はそんな人間じゃないよ。ただね、見てほしかったんだよ自分にはないものを」
「訳わかんない…」
オレガノの表情が段々疲れてきた。よし、この調子。
「だからね、オレガノ。彼女達と腹を割って話してみるとか―」
「あぁ~もういいよ!本当に訳わかんない!!うだうだ考えてるのもどうでもよくなってきた。もう部屋戻るから絶対来んな!」
そう言って顔を真っ赤にしたオレガノは入口の扉を乱暴に閉めて庭を出ていった。
「フェンネル、これでよかったの?」
「あたし達が来た意味よくわかんなかったんだけど…」
「これでいいんだよ。塞ぎ込んだあの子を何とかするには、それがどうでもよくなるようにするのが効果的なんだ。しばらくしたら、部屋から出てきて普通に戻るよ」
「そ、そうなんだ」
とりあえず一件落着かな?フェンネルはお腹が空いてきたので弟の機嫌直しを含め美味しい昼食をみんなに振る舞うことにした。
WITCH HUNT えなか @madders
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