概要
かつてない危機が重なろうとしていた。
聖都を守る六大卿の一席、
ラーデンブルク公爵の地位は五年間空位のまま。
後ろ盾を失った宮廷では権力者たちの思惑が交差し、
内政は停滞し、腐敗は深く根を張っていた。
そこへ、南方の小国スウェヴィが三万の軍を率いて進軍を開始する。
国軍を動かす軍事総監は不在。
六大卿は派閥の争いに明け暮れ、会議は踊れど進まない。
皇母リザルト=レイヴン四世が最後に頼った相手は、
宮廷の誰でもなかった。
離宮に引きこもり、気が向かなければ絵も描かない。
皇母付きの女芸術家ヴィラン=ウィーグ。
傍若無人で、飄々として、誰にも従わない。
しかし、亡きラーデンブルク公が生涯でただ一人、その才を認め、
すべてを教え込んだ弟子が、この女
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!~ 絵筆を持つ「異端」が、聖都の運命を背負う日 ~
権力者たちの派閥争いと外敵の進軍という二重の危機の中、皇母が最後に頼ったのが宮廷の誰でもなく、離宮に引きこもる気まぐれな女芸術家だったという選択の意外性が、この物語の出だしを強く印象づける。
ヴィラン=ウィーグという主人公の造形が秀逸で、傍若無人で気が向かなければ絵も描かないという破天荒さと、亡き師がただ一人才を認めた継承者という重みのある背景が同居している。豪快な目覚め方や小姓とのテンポの良い掛け合いに見られるユーモアと、六大卿の腐敗・派閥争いという重厚な政治劇が同じ世界の中で違和感なく溶け合っているのが巧みだ。派手な戦闘の連続ではなく、人間の心がいかに国を腐らせ、また救うのかを静謐に描…続きを読む - ★★★ Excellent!!!滅びの鐘は目覚めの号砲。かくして遺志は受け継がれた。
いわゆる前日譚に位置する外伝ですが、本編に負けず劣らずの読み応えがありました。面白かった〜!
宗教共和国が戴く皇母の虎の子、芸術家ヴィランはダウナーな飲んだくれおねえさま。
傍若無人に周囲を翻弄するトリックスターのようでいて、その実、道を見誤らないまっすぐな心を秘めています。
本編でも魅力的でしたが、主役を張るとより強い。好きです。
圧巻の戦闘描写もさることながら、立体的なキャラクターたちが織り成す人間模様も見どころです。
誰しもに理想があり、信念があり、立場があり、守りたいものがある。
打ち倒すべき“敵”って、いったいなんなのでしょう。
答えはひとつじゃないし、そうそう出せるものでも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歴史が動く、その場に居合わせたような臨場感!
作者黒わんこ様が、ファンタジーのタグから歴史のタグへ変えられたことに納得です。
始まりは陽気なファンタジーのような面白さを楽しませて頂いてましたが……
あれよあれよと言うまに、主人公ヴィランの周りには「国家の大きなうねり」がやってきます。
その時、彼女はどう考え、どう動くのか。そして、そうさせる彼女の背景には何があるのか。
この物語の魅力は力対力の話ではなく、思想と思想であり、お互いに引けない大義名分によって突き動かされるからだと感じます。
ヴィランも敵対するギュルハネも、皇母も、全員が「自分の発言や行動が、国家や民にどう波及するか」という政治的責任の中で確実に生きています。
こち…続きを読む - ★★★ Excellent!!!異端の芸術家、戦場に咲く
芸術家が主人公の”戦記ファンタジー”という珍しい設定を、物語として成立させているのが本作の魅力です。
主人公ヴィランは、異端視される女芸術家でありながら、聖都リザルト=ヘイブンを守るため、亡き師の名を継いで戦場に立ちます。時に凛とした色気を漂わせ、時に冷徹なまでの智将ぶりを見せつける――その姿が実にかっこいいのです。
戦略や政治の描写は丁寧で緻密です。その中で、ヴィランの“芸術家ならではの視点”が物語に独特の色を添え、戦場の情景や人の心の揺れを鮮やかに浮かび上がらせます。
重厚な戦記でありながら、主人公の感性が柔らかい余韻を残す、読み応えのあるダーク戦記です。