第3話阿鼻叫喚②
私の目の前で信じられないことが起こっている。突如として、ホシカゲの戦略により、10人の魔法師は何も攻撃をしてないのに倒れ伏したのだ。
「いやー、ここまで綺麗に引っかかるとは思わなかったよ!
君たちが、倒れたのは急激に体の中の魔力の濃さが変化したからだよ。」
ホシカゲは一つ一つ説明し始めた。
「君が対策するなんて、最初からわかってたよ。
対策法に気づく程度なら君たちの中にもいると思ったし、対策法についてもこっちは100も承知だ。だからここで罠を仕掛けた。
まずは最初の魔力の塊の魔法だ。
あの魔法はね、魔法師以外を引かせる以外にもね、目的があったのさ。
それはこの場所の魔力の濃度を上げることだ。
魔力の塊は時間が経てば、塊ではなくなり、魔力にもどってくる。そうすると一時的に多くの魔力がこの場所に充満し魔力の濃度が上がったのさ。そして君は次何をした?」
「も、もちろん、魔法の暴発を防ぐために、魔力を吸し、あっ!?まさか!?」
そう合点が言ったように驚いたような声をあげた。
「そうだよ。二つ目の罠。
魔力を吸収させなくする壁を作らせるんだ
。魔力の壁はね、魔力を吸収どころか、魔力を放出つまり、魔力が自動的に濃度を調整することすらできなくなするのさ。
これで、君たちの体の中の魔力の濃度は濃くなった状態を保っている。
しかし、この場所は魔力が拡散することで薄く、さらに私の魔力吸収によってこの場所は元の濃度に戻る。
つまり君たちの体だけが魔力の濃度が濃い状態になったわけだ。
魔力はね、水が同じ高さを保とうとするように同じ濃度にしようとするんだ。
だから君たちの体にも元の濃度にしようとする働きがくる。
だができない。壁があるからね、そうするとどうする?
壁を壊そうと、さらに強い力で魔力を引っ張り出そうとする。
そしてある地点で、壁が壊れる。
すると一気に魔力を持っていかれる。君たちのその頭痛は、一気に濃度が低くなったことと、魔力が減ったことによるものだろうね。」
そう言ってのけた。
その説明を聞いて私はすごい…その感想しか出てこなかった。
大規模の魔法を敵を倒すために使わないその胆力。
魔力、魔法に対する深い理解。
敵を正確に分析する力。そしてそれを全て実行するほど大きな力。
本当にホシカゲが味方で良かったそう思った。
「それでどうする?エールに殺すなって言われてるし、見逃してあげるよ」
そう馬鹿にしたように言った。
「くそ、次は絶対に勝つ…。お前ら行くぞ…」
そう言い残し、去っていった。
現場にはボコボコとした魔法の跡のみが残っていた。
流石にさっきの戦力が最大戦力だったようで、これ以上追っ手に追われることもなく、私たちは何事もなく隣国についた。
隣国についた頃には太陽も沈み、夜になっていた。
「よし、もう国を出てかなり経ったから、ここら辺で休もうか。
夜に進むのは事件の危険もあるからね」
そして、ホシカゲは焚き木の準備をし始めた。
私はそれに手伝ったあと、馬を買った村で買った。
パンを取り出し食べ始めた。
ホシカゲはサファだから食べなくても平気らしい、先ほどから、どこまで焚き木に燃えないように近づけるかというチャレンジ?をやっていた。
」あっつー!!」や、「やばい、燃える燃える!!」という楽しそうな声が聞こえてきている。
そして
「ホシカゲ?それ楽しい?」と聞くと
「結構たのしー」と返ってきた。
楽しいならいいか、まぁ。それに今日のMVPだし。そう思ってると
「それにしても、今日は助かったよ、ありがと!」そう感謝を述べてきた。
「え?私何にもしてないけど!?」
これは本当だ。今日私は何にも役に立てていなかった。
敵も全部ホシカゲが追っ払ってくれたし…。
私にやったことといえば、馬の運転と、少しフートとしゃべったくらいだ。
しかしホシカゲはそう思っていないようで
「いやいや、君が時間を稼いでくれたおかげであの大魔法の準備も間に合ったんだ。
それにあの演説の内容も良かったよ!」
そう茶化すように言ってきた。
「もー、茶化さないでよ!結構恥ずかしかったんだからー!」
そう少し怒り気味に言うと
「いやいや、茶化してないよ!ほんとに感動したんだからね!
『私の幸せはホシカゲがいないと、成り、うわー、やめろぉ!」
ふう、危ない。私の黒歴史が反芻されるところだった。
私はホシカゲの口を抑えそして、耳を持ってぐるぐる回しホシカゲのセリフを妨害した。
そして話題を変えるがてら、やはり今でも日課にしているおままごとをホシカゲと始めたのである。
僕は今現在、おままごとで遊び疲れて寝ているエールを見守っている。
エールの腕の中から脱出し、思案し始めた。
(やっぱり、まだあの追っ手のことが気になってそうだったけど、寝てくれて良かった。)
言葉では大丈夫と言いながらも、少し怯えた様子のエールを見るのは少し見るに耐えなかった。
だからおままごとをして、大丈夫と声をかけた。その効果もあったのだろう、
今では僕が頬撫ででも起きないほど熟睡していた。
僕は頬を撫でながら考える。
やはり、エールは優しすぎる。まだ人に騙されたことなどないのだろう。
純粋を保ち、全ての人間に慈悲を与えようとする。
それ自体僕は全く悪いことだとは思わない。
なぜなら僕もその純粋さに惹かれ、また人を信じてみようと思ったからだ。
僕は思い出す。
エールを守ったあの瞬間を。それはほとんど直感に近いと言う方が正しい。
あれほど、使うのを拒み、忌み嫌った、声を、そして魔力があの時は自然と使うことができた。
そしてエールは僕のあの呪いの力さえ受け入れてくれるとさえ思い始めた。
だが、それでもそれは無理だと考えた。
あの人でさえ、あの子でさえ、僕の力を知ると、もう二度と元の関係には戻れなかったからだ。
だから、この関係を続けよう。あの瞬間が、あれが露呈する瞬間がこないことを祈り続けながら。
しかしそれを恐れながらも僕はエールが幸せになることを願っている。
そしてそのためなら、エールが望むなら、あの力さえ使ってみせるという覚悟さえある。
そしてホシカゲは覚悟を決めた。
僕は悪でいい、エールが善であり続けるならば。
そうであるなら、僕は救われるのだ。
だから僕は僕のやるべきことをしよう。
これはエールのためではない僕のためにやることなのだ。
そうして、ホシカゲは夜の闇へと消えていった。
サドラー家 本邸
「なぜ、サファ一つに、サドラー家、一番の兵士のお前がそんな無様な真似を!!!!!」
フートの報告を聞いた、サドラー男爵は怒りを抑えきれず、近くにあった手頃な花瓶をフートに投げつけた。
結果は惨敗だった。
成果は一つもない。
それどころか、兵士のほとんどは怪我、このことが原因で領内では私の手腕に反対するような勢力さえ、現れ始めたのだ。
これでは領土を広げるどころか逆に攻められ滅亡してしまう。
そして、どうこの落とし前をつけようか考えているところに、一人の兵士が入ってきた。
「おい!!なぜ私の許可なしに入ってきたんだ!!この無能め!!」
そう怒鳴ったところで気づいた。
その兵士は正気ではなかった。目はどこか虚ろで足取りはおぼつかない、そして何かぶつくさ呟いている。
「なんだ、こいつは!?」
「違う世界にいるのさ、彼は」
そうどこからか少年のような少し甲高い声がした。
その声に今まで黙って、頭を垂れていた。
フートは驚いたように声をあげた。
「なに!?あのサファがなぜここに!!サドラー様。奴の声です。あのサファです、おい!出てこい。」
「ふふ、いつまでも隠れるわけないじゃん」
そう先ほどと変わらないような声をあげながら、その兵士の後ろから姿を見せた。
それにフートはほくそ笑みを浮かべた。
「ふん、サファ、お前は私たちを舐めすぎだ。攻撃魔法もない、そして先ほどの技もできないこの屋敷を襲うな…、、ぎゃぁぁぁぁぁぁ」
突如、フートの右腕が燃えた。しかもすごい火力で燃えていく。焦げたお肉のような匂いが大広間に広がる。
「攻撃魔法が使えないなんて、一言も言ってないよ?」
それ以上に驚くべきは
「な、なぜ、ひ、火が消えないんだ!ぁづい、あづいぃぃぃー!!だ、だずげでぇー」
おかしいのだ。普通の火の魔法あるならば、燃えて、2秒でも経てば消えるだが、この魔法は消えないのだ。苦痛がずっと続くのだ。
しかもなぜか火に囲まれながらも無傷で焦げることもしない。
「うーんとね、永遠に消えないよ、この魔法はね、地獄の業火っていう魔法でね、人を燃やすためではなく、人を苦しめるための魔法なんだよ」
そこで、もう兵士たちはパニックになり、てんやわんやで逃げ出そうとした。
しかし
突如、四方八方全てが火で覆われた。
「ふふ、簡単には逃さないよ、、だって僕、言ったよね?
もう一度、エールに手を出したら容赦しないよって?
君たちはエールにどんだけの心労をかけ、苦痛を与えたかわかるかい?
だがねエールは優しいんだよこんなクズどもにも慈悲をかけるくらいにはね、
でも僕はそんな甘くないよ、その代償は払わせるから。
さぁ喜びな、君たちが起こした因果だ。
最高のフィナーレにしようじゃないか」
さまざまな攻撃魔法が飛んでくる
それを片手間に火でかき消すと、
「ただ、エールに言われたんだ。
人を殺してはいけないってね、だから殺さないようにだけは頑張るよ。
だから本来ならモールダートくんの本分で僕は苦手なんだけど、呪いもやってみようと思う!
呪いは精神攻撃にはピッタリだからね」
そして、さまざまな魔法や呪いをかけ始める。
そしてホシカゲは笑みを絶やさないまま口を開く
「あぁ、自己紹介がまだだったね。私の名前はホシカゲだよ。
「阿鼻叫喚」のホシカゲ。よろしくね」
大広間は阿鼻叫喚で満たされ、まさに「地獄」と言えるような場所となっていた。
─────────────────────
???
真っ暗な空間、蝋燭のみが煌々と光る空間で、一人の男は、座った男に報告をした。
「教祖様、あのお方の気配が確認され、予言が追加されました。」
その言葉に教祖と呼ばれた男は感極まって泣いてしまった。
「あー、、、そうか、、やっと我らの、我らの悲願が達成する。
さぁあの御方を迎えにゆこうぞ!
虐げられてきた我らが今こそ世界を支配するときだ。
祝いの地はどこなのだ。」
それに一人の男は怪しく目を輝かせながら答えた。
「教祖様、祝いの地は大都セプカーナで行われるそうです。」
それに鷹揚に頷いて、はっきりと答えた。
「全軍を出すぞ、我らは祝いの地、大都セプカーナへと向かわん」
真実の焔は動き出した。
─────────────────────
あとがき
皆さんこんにちは、こんばんは桃田 昇吾です。
これにて1章が終わりました!!
次からは2章へと向かいます。
さらに大規模に、派手な騒動が起こる予定です。
エールとホシカゲの活躍に期待してください!!
冒険はぬいぐるみを愛でながら 桃田昇吾 @Naago8
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。冒険はぬいぐるみを愛でながらの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます