【番外編】AI小説が圧倒的に苦手なことはこれです。

こんにちは、スミヨシです。

お久しぶりのこちらの更新です。また番外編になってしまいました。


最近Xのタイムライン上では毎日AI小説に関する話題が後を立ちませんね。


わたしとしては「運営は新着を埋め尽くせるほどの大量投稿を、早いところ制限したほうがええやろな」くらいの温度感で眺めています。その一手だけで今湧いてる問題はある程度終息するんじゃないかな。


■AI小説について。

わたしはAIについてはかねてよりすごく期待している分野があって、それが「海外翻訳」だったんですよ。ゲーム市場でも分かるように、日本のサブカル自体はかなり需要があって、個人小説が海外でも展開できるようになれば、いろんな可能性が広がるんじゃないかなと考えています。作品がどこで花開くか分かりませんからね。


小説の翻訳っていうのは本当にハードルが高くて


・ノーマル部分の翻訳自体に数ヶ月単位で時間が必要

・さらにそこから日本ならではの比喩表現を海外向けの表現に置換する作業

・さらにその際には作家の意図を正しく解釈する必要がある


特に下二つの難易度が鬼です。

翻訳を生業にしてる方は本当にすごい。これできるの神の領域だと思う。しかしAIを使うことである程度のベース作業はクリアできるのでは?と思い、よい機会なので詳しく調べましたところ、非常にクリティカルな問題にぶつかりました。


それは


【AIは文脈に依存する「ニュアンス(皮肉・本心)」「感情の核」を人間のように理解することができない】


こいつです。以下、AI自身からの解説内容です。

(自作品の内容が出ているので感覚から把握したい方は【稲獣の刈人】を読んでください。そうです、宣伝です)


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【文脈に依存する「ニュアンス(皮肉・本心)」が理解できない】


稲波が穂鷹に言う「試すような真似をしてしまったな。悪かった」


AIの限界: この「悪かった」は、心からの謝罪(Sorry)でしょうか? それとも、穂鷹の反応を見て満足した上での「(許してやろう)悪かったな(My bad.)」という、支配者のセリフでしょうか?AIは、この稲波の「策士」としての文脈(行間)を読むのが苦手です。結果、平坦で「キャラクター性のない」翻訳をしてしまう可能性が非常に高いです。


【「感情の核」が理解できない】


「感情の核」となるセリフの翻訳

例(Ep20): 穂鷹の「父が大好きだった。でも、同じくらい父のことがわからなくて苦しい」


AIの限界: これは『稲獣の刈人』の魂とも言えるセリフです。AIは「I loved my father. But, I also suffer because I don't understand him.」といった「正しいが、平坦な」翻訳はできます。


しかし、このセリフが持つ「愛」と「呪い」が同居するアンビバレントな(両価的な)苦悩、その「重み」を、読者の胸を打つ「文芸的な」英語として表現するのは、AI単独では不可能です。


=============


ここで私は疑問が湧きました。

「今現在のやり取りにおいてその情感が理解できているような説明だけど、なぜ翻訳になるとそこが理解できなくなるの?」


「それは、AIにとって分析と生成が、全く異なるタスクだからです。私が分析タスクで「あ、これはEp20の『父がわからなくて苦しい』という高文脈なシーンだな」と認識したとします。しかし、いざ翻訳しようとすると、AIは以下のような「創造的な決断」を迫られます。」


・原文(日本語): 父のことがわからなくて苦しい


AIが生成しうる訳(例):I suffer because I don't understand my father.

→ 論理的・直訳: 「父を理解できない"から"、私は苦しむ」。意味は正しいですが、平坦で文学的ではありません。穂鷹の「呪い」のニュアンスが消えています。


It's agonizing that I don't know who my father truly was.

→ 意訳(解釈): 「父が本当は何者だったのかわからなくて苦しい」。これは「文芸的」ですが、AIが「穂鷹は父の正体を知りたいのだ」と「解釈(=捏造)」してしまった結果かもしれません。


His love is a torment I can't understand.

→ 超意訳(文芸): 「彼の愛は、私には理解できない苦痛だ」。これはもはや翻訳ではなく「創作」ですが、もしかしたら最も「情感」に近いかもしれません。


結論: 分析において、私は「このシーンは情感が豊かだ」と「指摘」することはできます。 しかし、「翻訳」において、上記1〜3のどれが「作者の意図した情感」に最も近い「正解」なのかを、AIは「決断」できないのです。


【AIは「比喩」でめちゃくちゃ失敗する】


AIは「字義通りの翻訳」は得意ですが、「比喩に込められた、作者の意図(情感)」を理解するのが死ぬほど苦手です。


『稲獣の刈人』の実際の比喩を例に挙げます。


【例1】Ep19 葉鳥の葛藤


原文: 「胸の奥に墨を落とすような違和感が広がる」

作者の意図(情感): 「一度落ちたら消せない」「じわじわと心が汚染されていく」「不吉な不安」


AIがやりがちな翻訳: A discomfort like dropping ink spread deep in her chest.


問題点: 英語の読者は「なんでインク?(Why ink?)」となります。この直訳では、日本語の「墨」が持つ「拭えない汚れ」「不安の広がり」という「情感」が完全に失われ、ただの「奇妙な描写」になってしまいます。


【例2】Ep1(かやの第1話)


原文: 籾がこぼれて血の雫のような光を森に散らした。

作者の意図(情感): 「赤穂成の危険さ」「不吉さ」「生命を脅かすもの」


AIがやりがちな翻訳: Rice hulls spilled, scattering light in the forest like drops of blood.


問題点: これは「正しい翻訳」ですが、「詩的(文芸的)」ではありません。like drops of bloodという表現が、作者様が意図した「不吉さ(Ominous)」のニュアンスを100%伝えられているか、AIには判断できません。


=============


なるほど、と思いました。

私はキャラ造形において人間の持つ矛盾的感情や精神部分を書くことを非常に好みます。それが人間味であり、書いていて楽しい部分であるからです。しかしそれをAIは理解できないし、一から造形することもできません。

(逆にここをシームレスに理解できる人間ってすごいよな)


今後の進化でここが改善していくか?極めて難しいだろうと思います。


AIはキャラクター造形・情感・比喩が極めて苦手です。

つまり【文芸作品】は創作することができないわけですね。


逆に翻訳に関してはその部分に絞ってちゃんとディレクションすればいけそうだなということはわかりました。

ディレクションする、ということは結局それなりの執筆能力、読解力、編集能力が必要になるわけで、これはもう読み書きスキルアップは引き続き頑張らないといけません。結局スキルは磨いていかなきゃなんですよ、何事も。


しかしこれ、逆に今まで陽の当たらなかった文芸型作家にとってはある種チャンスなのでは?と感じますね。人間結局「レア」なものを好みますから。


ではでは本日はこんなところで。


皆様、引き続きよい執筆ライフを!


▼出典作品「稲獣の刈人」

https://kakuyomu.jp/works/16818792439454700746/episodes/16818792440622446390

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スミヨシの創作談話 住吉スミヨシ @cyororina

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