理想論と信念の在り方を描いた王道のSF×AI

 「理論」とは極端に言えば「理想論」
 
 ――理想は何も解決しない。
 
 よく聞く言葉です。では、あなたはそれをアインシュタインに言えますか? 物理学史上稀に見る、破壊的な礎を築いた偉人です。

 かのアルベルト・アインシュタインは言いました。
 "Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.”
《空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包む》
 
 理想論とは希望です。そしてその理想論こそが科学の重要な礎となり得る。

 ただ、実際に理想論を掲げてみると、意外にもそこには一握りの綻びがあり、掬いきれなかった事象の幾つかはやがて波紋を引き起こす。

 この物語に出てくる登場人物たちには、信念があり、理想があり、各々の痛みがあります。彼らの描く旅路は一見美しくも見える。

 けれど、土にまみれたその路面の下は、数えきれない血と汗と、痛みがある。その昇華が叶ってこそ科学技術が実現する。理想を掲げる一人の青年は、彼と意志を等しくする仲間と共に、果たしてどこへ向かうのでしょうか。

 安定した語りとAIにかける若者の情熱が魅力の一作です。

 この理想は私たちに何をもたらすのでしょうか。

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