ひとりの少女をめぐって交差するクライム・サスペンス

本作は「娘を失ったCIA職員」と「灰色ウサギの怪盗」が、同じ少女をめぐって交差していく"ハード寄りの家族×クライム・サスペンス"です。爆破事件で消えた娘の生存を信じる父と、少女を「ミア」と呼んで守り抜くウサギ頭――この二つの視点が、交差するストーリーです。

主人公格は二人います。
ひとりはCIAのグレン。ホテル爆破で亡くしたはずの娘・花澄(カスミ)が、灰色ウサギのマスクの男と一緒にいる映像を見つけ、真相を追い始めます。
もうひとりは、裏社会で「穴蔵破り」と呼ばれる怪盗フェリクス。少女ミアと暮らし、次の大仕事へ動き出します。
面白さの入口は、「この少女は本当にカスミなのか」「ウサギは誘拐犯なのか保護者なのか」「父は取り戻せるのか」という三つ巴の疑問が、ずっと背中を押してくる点です。

グレンは"喪失と執念"で、見つけた手がかりをひとつずつ詰めていき、フェリクスはミアとの距離が近い分、読者の感情を揺さぶってきます。
ミアは単なる「守られる子」ではなく、作戦にも関わり、しかも不思議な力(本人は"妖精さん"と呼ぶ導き)まで匂わせます。
ここが、ただの強盗劇で終わらない推進力になっています。

グレンとフェリクス。
二人の心情が、その背景と共に語られるため、非常に感情移入してしまいます。

灰色ウサギは"奪った側"なのか、それとも"救った側"なのか。
ミアが見ている"妖精さん"は、彼女をどこに導くのか。
果たして、グレンは花澄を取り戻せるのか。

是非、複雑に交差する感情の波を浴びてください。

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