川辺十貌の一会

猫煮

川辺十貌の一会

蒲の穂を 毟っては 精霊流しにも 会えぬ人の 影に被せ


竿先の 揺れたと見ては 飛び起きて 釣りたる龍は 夢にのみおり


照り返す 川面眩しき 君の声 ラムネの泡に 溶かして飲めり


水切りの 勘所よと 石選ぶ 父親の背を 見もせぬ男子(おのこ)


ザンザブリ トプントンタン ザバアケホ キャハと笑った手に ガラス片


崖の上 木の上の巣の 上の雛 頭の上の 風の夢見る


砂糖塩 せうゆに味噌の 揃いたる バーベキューでは 素はみせじまい


水音に 紛れて聞こゆ 声の主 笑う姿は 隣にあらじ


川石の 宿はカエルが 一人寝と 耐える涙の 湿らせている


水たまり 取り残された ドジョウにも 干上がるまでの 命ねたまし

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