淡々とした語り口の奥に、確かな感情が響いてきます。
- ★★★ Excellent!!!
前編は、主人公の女性の一人称で進み、その語り口にすぐ引き込まれました。
淡々としているようでいて、胸の奥にしまってきた感情や過去の記憶がじわりとにじみ出ており、とても人間味を感じます。
後編では視点が彼氏に移り、彼の内面が丁寧に描かれることで、物語全体にさらに厚みが増しています。
二人の視点が重なることで、互いに抱いていた不安やすれ違いが読者にだけは見えてきて、思わず二人を応援したくなりました。
全体として、短い言葉の積み重ねが心の奥を覗いているような感覚を生み出し、読んでいる側も一緒に心情を追体験しているようでした。
読後には温かさと余韻が残る、素敵な物語です。