ファーストペンギンになれなくて

いぬのいびき

玄人だらけの感想欄

 私はよく、コメントを残したい!と思った作品をスルーしていく。

 いいねと、星3つだけを残して。


 いや、「面白かったです!」の一言だけでも、残したほうがいいのはわかっている。

 だが、その一文だけを残すには、想像を絶する勇気がいる。


 考えてもみてほしい。

 長文感想・深い感想・考察感想の並ぶ玄人だらけの感想欄に、たったひとりだけド素人みたいに「面白かったです!」と書くのは、さすがに失礼なのではと思ってしまわないだろうか。


 場違い感が半端ないというか、なんというか。

 そういう雰囲気をバシバシ感じないだろうか。

 

 それはさながら、マッチョだらけのジムに一人だけポッチャリの自分が入ってしまったような。


「こ、ここってダイエット目的の軽いトレーニングもできますか?」

「オウ、できるぜ。うちの軽いトレーニングは軍隊並みに厳しいけどな!」


 そう言われて、思わず尻込みしてしまう絵面が見えやしないか。

 

 それでもコメントを残したいと思い、私も「ちゃんと玄人っぽい感想を残さねば!」と変な使命感を持つのだが。

 やはり歴戦の玄人たちとは比べ物にならぬほどド素人な感想しか思いつかず、結局その場を去ってしまう。


 小心者でごめんなさい。

 本当はコメントを残したかったんです。


 そう思いながら、次のページを捲ってしまう。

 なんと惜しいことをしてしまったのだろう、と後悔の念を抱きながら。


 しかし私だって、たまにはコメントを残すこともある。

 私と同じくらいの、短文のコメントが先に書かれているときだ。


 その短文のコメントを書いた読者さんを、私はファーストペンギンと呼んでいる。

 ファーストペンギンとは、リスクを恐れず最初に海へ飛び込む、ペンギン界の勇者である。


 私はその勇気に感銘を受け、セカンドペンギンとしてようやく短いコメントを送ることができるのだ。


 そして私は考えるのだ。

 いつかは私が、ファーストペンギンになれたらと。

 

 そう思いつつ、今日も私はファーストペンギンを探しながら、いいねと星3つを送るのであった。

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ファーストペンギンになれなくて いぬのいびき @niramania

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