大好きな「家族」みたいな人形だから、どう対処していいかわからなくて……

 捉えようによっては、「それ」は幸せな出来事のはずだった。

 主人公はフィギュアやぬいぐるみの類が大好きで、百体以上もの人形と一緒に生活を続けていた。
 しかし、ある時にお気に入りの「ミコちゃん」のフィギュアやぬいぐるみが動き出しているのに気づいてしまう。

 これはハッピー! 大好きな人形が自分の意志で動き出し、自分に寄り添ってくれる。それはもはや「嫁」とすら呼ぶこともできるムーブ。もうリアルな奥さんなんかいなくても寂しくない。そんな境地にすら辿り着けそうなほどの満足感。

 しかし、事態を甘く見てはいけなかった……。

 人形に「何か」が宿り、それが動き出すという現象。
 それはある種の「ホラー」の定番。

 たとえ大好きな人形だとしても、「中身」は本当に「その人形らしい人格」であると断定できるか。

 人形に心が宿ったとして、一体どのように接していくのが人間としての「正解」なのか。そして、その事態をどういうものとして受け止めるべきなのか。

 愛する者の姿を取っているから、余計に判断が難しい。
 もし、自分の大切にしている人形に同じような出来事が起こったら、果たして「どう」向き合えばいいだろう。きっと強い葛藤を強いられるに違いない。

 人間の心の「柔らかい部分」を侵食してくる、色々と考えさせられるタイプのホラーでした。

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