寝ても覚めてもロックンロール! そんな彼の精神世界を堪能できます

 ロック、ロック、ロック。頭の中が全部「ロック」で満たされている!

 作中の主人公は、とにかく「ロック」が精神の大半を占めています。
 そんな彼の人生に一つの転機が訪れる。

 感情が揺れ動く。心がビートを刻む。その度に、彼の意識に出現するは、彼の愛していた「ロック」のフレーズやタイトルたち。

 この感じ、突き詰めるとすごくしっくりくる感じがあります。

 人が「現実」と向き合う時、本当に「ありのまま」で全てを受け止めているか。

 非日常的なことと向き合った時などは、ふと「何かの作品のイメージ」などが頭に浮かぶことって良くあるんじゃないか。

 漫画が好きな人だったら、「今の状況って〇〇の漫画の中で出てきたような感じ」とか、目の前で起こっていることをいったん漫画で置き換えて解釈することもあるのではないか。

 何かを強く愛している度合により、「現実を解釈する指標」として、漫画とかアニメとか、あとは映画とかロックとか、そういうものが意識をよぎるように人間の頭は出来ているのかもしれない。

 本作はそういう「ロックを聖典」として生きている男の精神世界をあますことなく描き出した作品だと感じました。

 何につけてもロック。何かに心を動かす度に、ロックの世界の偉大な先人の言葉や曲のフレーズなんかがよぎってしまう。
 心の全てをロックで満たし、ロックと共に生きる。そんな心の中をしっかりと味わうことができました。