俺の世代（マイ・ジェネレーション）の話をしよう。俺はジョジョ。若くして希望はない（ヤング・アンド・ホープレス）。プラスティック・スプーンをこの口にくわえて生まれてきたんだ。ストリートで殴り合うような貧乏人のガキは何の仕事をしたらいい？　ロックンロールバンドでがなりたてる以外に。*1

「俺にロック・アンド・ロール・ミュージックを聞かせてくれ。お前が選ぶのはこの古い方法だ」

　ミスター・ムーンライトが言った。ある夏の夜のこと、彼は俺の元に来た。夢の中から出てきたような月光のビームを放っているかのような佇まい。

「誰なんだ、お前は（フー・アー・ユー）。誰だ、誰だ？」

　俺は言った。

　俺の名前を知っている警察官か？　このまま地下鉄まで逃げてしまおうか？　俺は思った*2

「誰なんだ、お前は。誰だ、誰だ」ミスター・ムーンライトはおうむ返しした。「君は自分が孤独（loner）だと見做している男だ。君からは十代の魂（ティーン・スピリット）の匂いがする。雨というものを見たことがあるのか。私はアフリカに降る雨を礼賛している」

「風を集めて、青空を翔けたいんだよ。大体同じ毎日でそれなりにOKな人生。だけどなんとなくさ、虚しくなるんだ。晴れた日には、タバコを吸ったりする。そうだよ、つまらないんだ」

「自由になるために生まれてきたんだろ（ボーン・トゥ・ビー・フリー）？」

　ミスター・ムーンライトは言った。

「見てみろよ、エミリーがプレイするのを（シー・エミリー・プレイ）」*3

　俺は見た。望遠鏡を覗き込んだ。静寂を切り裂くように、いくつもの声が生まれていく気がした。

　これは夢（イメージ）か？　いや、現実（リアル）だ。

「見てみろよ、エミリーがプレイするのを」

　ミスター・ムーンライトは繰り返した。

　長いブロンドヘアーと青色の瞳。赤いタンバリン。そんなに美人なわけじゃない（ホームリー・ガール）。だが、腰と肘とハートで打っていた。通りがかった紳士たちがポラロイド写真を撮っていった。彼らは恋に落ちたのだ。*4

　これはただのロックンロールだった（イッツ・オンリー・ロックンロール）。でも、俺はこれが気に入った（バット・アイ・ライク・イット）。

　彼女は虹のようだった（シーズ・ア・レインボー）。色を帯びはじめて、あちこちを染めていった。いたるところを。彼女は虹のようだった。

　木曜日には記憶をなくすほどイカれてるが、金曜日には俺は愛の中にいる（フライデー・アイム・イン・ラブ）。愛さずにはいられなかった（キャント・ヘルプ・フォーリング・イン・ラブ）。*5

「彼氏になりたい」

　俺は言った。彼女の仕草の何か（サムシング）が、他の女の人と違って、俺を惹きつける。彼女から離れたくない。俺は彼女を信じてしまう。

「あなたは初恋というものを信じる？」

　エミリーは言った。

「うん。そういうことは起こり得ると思っている」

「私達はうまくやれる（ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト）。私を受け入れて（テイク・オン・ミー）」

　そして、こう求めてきた。

「キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー」

　俺たちはした――さくらんぼの唇（チェリー・リップス）。

　これが俺の最初のキスだった（ディス・イズ・マイ・ファースト・キス）。チュウ。

「ベイビー、ワン・モア・タイム」

　エミリーは言った。*6

「明日のロックンロールに向けてステイ・チューンしておいてくれ」

　ミスター・ムーンライトは言った。

「いま彼女は俺のものになった。よろこんでくれるといいな。俺たちはあんたのことが好きだよ（ウィー・ラブ・ユー）、ミスター・ムーンライト」

「いつか晴れた日に」

　ミスター・ムーンライトは去った。*7

歌詞の引用元

*1ビートルズ「ゲット・バック」ザ・フー「恋のピンチ・ヒッター」ローリング・ストーンズ「ストリート・ファイティン」グ・マン

*2チャック・ベリー「ロック・アンド・ロール・ミュージック」ビートルズ「ミスター・ムーンライト」ザ・フー「フー・アー・ユー」

*3ビートルズ「ゲット・バック」クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「雨を見たかい」トートー「アフリカ」はっぴぃえんど「風をあつめて」hide「Rocket Dive」フィッシュマンズ「RUNNING MAN」

*4バンプ・オブ・チキン「天体観測」LUNA SEA「Image」ビートルズ「イッツ・オール・トゥー・マッチ」BLANKEY JET CITY「赤いタンバリン」ジャパン「孤独の影」

*5ローリング・ストーンズ「シーズ・ア・レインボー」ザ・キュアー「フライデイ・アイム・イン・ラブ」

*6ビートルズ「サムシング」ビートルズ「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」

*7ラモーンズ「リメンバー・ロックンロール・レイディオ?」ビートルズ「ミスター・ムーンライト」