象徴としての椅子が導く、正義のグレーゾーン
- ★★★ Excellent!!!
壮大な構想と深い哲学が絡み合う「ジャスティスチェアの番人」。大学生・暁が“神でも悪魔でもない存在”から託されるのは、正義の剣ではなく一脚の椅子――そのユニークさにまず心を奪われます。ただの道具ではなく、「罪と向き合う」という最も人間的なテーマを可視化する象徴として機能している点が非常に印象的でした。
登場人物は一見「悪」と「善」に分かれているようで、その実、誰もが複雑な闇と光を抱えています。YouTuber宮部の章では、現代の情報伝播と“意思の共有”の危うさを、セラノア編では支援の裏に潜む構造的暴力や偽善、国際政治の矛盾を鮮やかに炙り出します。「正しさとは何か」「裁きとは何か」を、主人公と一緒に問い続ける旅路に、気づけば深く没入させられているはずです。
「人間の良心」「正義のグレーゾーン」「象徴の力」――社会や現実への視線が変わる、濃密な物語体験をぜひ味わってみてください。