身上書


私は『狼妖峠出張所のらゃしとうげしゅっちょうじょ』の

正式な 閉店 を、管理店でもある

須磨の支店長から宣言された。


十年にも渡る月日は、長い様でいて

あっという間に過ぎていったよ。

いや、本当に呆気ない終了だったから

どちらかと言えば拍子抜けだ。



鬼門に十年、腰を据える者あらば

 『狼妖峠出張所』は閉鎖する。



とんでもない条件だったが、これは

小淵沢家と物ノ怪との間で交わされた

約束だった。血筋の者は駄目だから

中々、上手く行かなかったらしい。


 …が気になるかね?


彼は本当に関西にいる支店長だよ。

いや、支店長だった、と言うべきか。

君同様に結構な遣り手でね、彼も又

今回の役員人事で西の天守ほんてん勤務に

なった様だ。



 ああ、そうそう。


『狼妖峠出張所』は今後、小淵沢家が

所蔵する国宝級の古道具類を管理

公開する『狼妖峠古美術館』として

新しく生まれ変わるらしい。

 辺鄙な場所だが、愛好家にとっては

六甲に又一つ観光スポットが出来たと

歓迎されるだろう。




…以上が、私が『狼妖峠出張所』で

体験した出来事だ。

今回、最後の辞令を以て私は完全に

メガバンクを去る事になった。そして

銀行子会社でもある人材派遣会社の

社長に就任する事が決まったよ。


 ああ、有難う。 君もね。


最後に、噂の 太白星スーパースター に会えて

そして話が出来て本当に良かった。



君の未来が更に明るく輝く事を

祈っているよ。








擱筆



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狼妖峠物怪録 小野塚  @tmum28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画

同じコレクションの次の小説