中央劇団

私と前田は中央劇場の前に着いた。

「そういえば、先輩はどうしてここに来たんですか?芦渡さんがここの劇団員だからですか?」

前田は私を見ながら尋ねた。

「普通に考えて、芦渡さんの能力を知ることができるのは、学校の友達か中央劇団の団員だけだ。そして、学校ではうちの弟分たちとつるむことがほとんどだったらしい。学校で一緒につるんでいる友達にも言っていない秘密をどうやって知ることができるのか。山本はなにか能力かなんかで知ったんだろうが、山本を消したかった事件の黒幕は芦渡さんの能力を気づける又は何の能力かは分からないが能力者であるということを気が付ける間柄だったということになる。だから、ここの劇団員が怪しいというわけさ。」

「すごいです。先輩!」

前田はとても関心したのか目をとてもキラキラさせていた。

「よし!では、さっそく中に入って話を聞きましょう!」

私たちはエントランスホールに入る扉を開け、中央劇場に入った。

この時間は稽古や学校があるからなのかエントランスホールはとても明るく事件の日とは全く別の場所だと錯覚しそうになった。

「あのーすいません。」

前田の方に目を向けるとちょうどエントランスホールの清掃をしている清掃員に話しかけていた。

「まだ、劇の開幕時間じゃないし、部外者は立ち入り禁止だよ。」

清掃員の女性はそう言いながら手を腰にあてた。

「私たちは風紀委員会の捜査でこちらに伺ったんです。小原さんはどこにいるか知っていますか?もしくは案内して欲しいんですが。」

前田は元気よく自分たちの目的を伝えた。清掃員は少し怪訝な顔をしたかと思うと溜息を吐いた。

「あいにくだけど、小原くんは今は外出しているよ。なんでも、総司くんがケガをしたらしくて、霜田くんを連れて病院にいったのよ。しかも、今日の午前の稽古は終わりだ!なんて言い残していったから全員、昼ごはんを外に食べに行ったよ。」

「そうですか。」

前田は分りやすくシュンとした。

「では、貴女でもいいです。芦渡さんと親しい劇団員が誰だったのか教えてもらえませんか?」

私の質問の勢いに少しギョッとされたが、清掃員さんは何かを感じ取ったのか目が少し細くなった気がした。

「花蓮ちゃんはいい子だったよ。でも、急な入団しかもいきなり主演だからあまり団員は関わろうとしなかったねぇ。でも、真那ちゃん、あ、松本真那ちゃんね。や鞠子ちゃんが稽古の時よく一緒にいたのを覚えているわ。鞠子ちゃんのほうが結構花蓮ちゃんと一緒にいることが多かったわね。ホント、なんでこうなっちゃったのかしら?花蓮ちゃんはいつも元気に挨拶を返してくれるし、笑顔が可愛かったからねぇ。それがあんなことになるなんて私は想像もしなかったよ。」

清掃員さんは深く溜息をついたかと思うと何か思い出したかのような表情をとった。

「そうそう!鞠子ちゃんと言えば!貴女たちこっちに来なさい!」

そう言って、清掃員さんは手を振りながら、エントラスホールの隅に移動した。

私たちは清掃員さんの後について隅に移動すると

「私は結構な時間この劇場で働いてきたんだけどね。最近、得にここ数カ月他の劇団員をここの周りで見かけることが多くなったのよ。」

「それは、ここの技を見て盗もうとしているとかではなく?」

前田は清掃員さんの話に疑問を呈したが清掃員さんは首を振った。

「もちろん、昔からそういう劇団員さんは見かけているけど、私が言いたいのは見かける時間がここの劇団の稽古の休憩時間とか稽古終わりだということなの。私も美人な女探偵なんかに憧れてね。あの子たちが何をしているのか知りたくなって影からこっそり覗いて見たのよ。それに何か悪いことをしていたら注意しなくちゃいけないでしょ。それで、覗いて見るとあら、びっくり!鞠子ちゃんがそこにいてあの子たちと話していたの。それで、ああ鞠子ちゃんが関わっているなら安心だわと思ったの。劇団員の噂話なんかじゃぁ学生の俳優の中で覚醒剤に近いものに手を出しているなんてのがあって、鞠子ちゃんは違法薬物をすごく嫌っていたから、大丈夫ねって思ってその場を後にしたの、終業時間も迫ってたしね。

こんなおばさんの話でも役にたったかしら?」

「ええ、とても役に立ちました。ありがとうございます。」「ありがとうございます。」

私と前田は清掃員さんにお礼を述べて、劇場を出ようとしたが、ふと立ち止まって最後の質問をした。

「あの、すいません。最後の質問なのですが。宗前さんがどこに行ったか分かりますか?」

私の質問に清掃員さんは困ったような顔をして、頬に手をあてて答えてくれた。

「それが、ここ数日稽古に顔を出していないようなのよ。鞠子ちゃん。やっぱり、数カ月とは言え親しい人が殺人未遂を犯したのにショックを受けて寝込んでいるのかしら?鞠子ちゃんは第五区の第三寮に暮らしているわ。」

私は親切に答えてくれた清掃員さんにお辞儀をして、中央劇場から外に出た。

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カチューシャ 水里 葦 @mizuzatoasi

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