拷問
(やはり、私は殺されるのか。まぁ、美香と別れてからこうなるのは運命だったのかな)
能力で現状を確認したところ私が置かれている状況が大変なことだと分かった。
(こうなると分かっていたからあの二人には出て行って欲しかったんだけど)
私は横で縛られている後輩に気づかれないように溜息をついた。
そして、目の前の扉に視線を移した。
すると、私の予定通りに一つの影が部屋に入ってきた。
「初めましてというべきかな?元レッドバードの副リーダーさん?」
私が煽ると向こうは分りやすく動揺または怒ったのか体を揺らした。
「やっぱり、貴女は消さないといけないようね。」
影(笑)さんはそう言いながら私の前に立った。
「へぇー、ならサッサと殺せばいいんじゃない?私は一向にかまわないよ。」
私は上にある影の目を見ながら微笑む。その瞬間、私の頬に痛みが走る。どうやら、からかい過ぎたらしい視線を戻すと影の顔は酷く歪んでいた。
「減らず口が、でも、本当に残念。貴女はまだ死ねないわ。貴女が掴んだ情報が保管されている場所を吐かないといけないの。」
歪んだ顔を醜い笑った顔に戻して、影はそう告げた。
「私が吐きたくないんだけど、冥途の土産なんかで君にとっても大切で重要なことをしゃべりたくないんだけどねぇ。」
私はそう言って、腫れる頬の痛みを我慢して精一杯笑顔を作った。
影は私の顔を見て笑った、気がした。
「なにを言っているのかしら。喋らないなら喋らせればいい、信長も言っていることですよ。分かりずらいようですので簡潔に言いますと『拷問を貴女にする』と言うことです。もちろん、貴女が手早く情報を教えてくれれば、貴女とそこにいる男の子を痛みを感じさせずに殺して差し上げます。」
「何が『痛みを感じさせずに殺して差し上げます』だ。結局、消すんじゃないか。」「ええ、そうです。それも、沢山苦しませてね。」
この狂人が!要は私が拷問に屈すれば私と後輩くんが命を落とす。後輩くんの命を守るためには私は拷問に耐えなければならない。
「ふふ、貴女のそんな顔を見れるなんて、素敵ね。」
影は私の顔に快楽を得ているらしい、私はなぜか冷や汗を垂らした。
「で?どうやって尋問するんだい?爪をはがしたりするのか?」
私は声を震わせながら尋ねた。
すると、影はニンマリと笑った。
「そんなことはしないわ。だって、あれは耐え難い苦痛でどんな人間もすぐ尋問に屈するらしいじゃない?だから、私が使うのはこれ。」
影は懐から棒を取り出した。金属の棒らしく薄暗い室内の中で鈍く輝いている。
「私のことを嗅ぎまわっていた貴女なら私の能力も知っているはずよねぇ?」
影はニタニタと笑いながら私に問いかけてくる。
私はコイツがどんな拷問をするのか分かってしまった。
「そう!熱をあやつる能力!貴女を殺しかけたあの子の能力よりショボいけど、こういう風にできるのよねぇ。」
影はそう言うと私の前に棒を置いた。
そして、金属の棒は影の手が触れている箇所から段々と赤みを帯びていく。熱伝導率が大きいのだろう数分も経たないうちに金属の棒全体が紅に染まった。
「貴女も薄々気が付いていると思うけど、これで貴女を嬲ります。素敵でしょう?素敵ですね。貴女の奏でる悲鳴はさぞ美しく素晴らしい音楽なのでしょうね?安心してください。骨や内臓なんかが壊れないように優しくしますから。」
影はそう言って金属の棒で遊んでいる。
「ふーん。やっぱり役に成りきることは得意なのかい?元裏の人間が表で暮らせたようにさ。」
その瞬間、私の脇腹の周りに激痛が走った。
「あっ、ぐぅう、がはっ」
肉が焼ける匂いがした。嫌な匂いが鼻に届き、脳を強制的に不快にさせる。脇腹から全身が硬直するような痛みが広がり、声を出せずに嗚咽を漏らす。目から涙も出てきた。
「貴女が悪いのよ。私を煽ったから拷問が予定より早くなってしまったの。でも、元から時間がなかったし、しょうがないわ。」
影はニタニタ笑い続けている。
「さぁ?吐きたくなった?」
「ぺっ」
私は顔を近づけた影に向かって唾を吐いて、笑った。痛みで顔が震えながら笑った。恐怖を、傷みを、憎しみを、心の奥底に沈めて精一杯笑ってやった。
「 」
影の顔は醜く歪んでいた。
そして、金属の棒を振りかざした。
次は足に激痛が走った。脇腹の痛みが回復していないからなのか足は激痛に耐え切れず大きく痙攣し、股から温かい液体が飛び出す。すでに、私は穴という穴から液体が流れ出て見るも無残な恰好になった。
「あら?生意気な口を利いていたのに、二回でギブアップかしら?さっさと吐いた方がいいわよ。」
影はそう提案をしながら、笑っている。どうやら私の姿が影自身の加虐欲求を満たしているらしい。影の声はとても上ずっている。
「あら?言わないの?悲鳴も聞こえないし、見た目と違って心の芯は折れにくいのね。」
「っ」
溝内に痛みが走った。数回?痛みを感じたがなぜだ?私の体は痛みを逃がそうと必死に体を動かす。しかし、体を動かすたびに棒を当てられた場所から痛みが走る。でも、口を割らない、決して口を割るものかと耐える。自分の体が焼けた匂いの不快さは吐き気を催しているが我慢する。なぜだろうか。私は痛いことは嫌いなはずなのに、後輩くんのために口を割りたくないと思ってしまう。なぜだろうか。
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