【老作家短編小説】永遠の詠み人 ――名声と無名の狭間で――（約41,000字）

　90歳の国民的作家・中澤文枝は、「詠み人知らずになりたい」と願う変わり者。
　17歳の野心家・藤宮千尋は、「名を残したい」と渇望する高校生。

　雨の夜、図書館で偶然出会った二人は、思いがけず同居することになる。
「名前なんて重要ではない」と言う文枝と、「それじゃあ生きた証が残らない」と反発する千尋。
　価値観の衝突の中で、二人は徐々に互いを理解し始める。

　しかし、文枝の突然の入院と、フランスからやってきた息子との再会が状況を変える。
　生と死、名声と無名、言葉と沈黙??相反する概念の狭間で、二人は本当の「存在証明」とは何かを探る。

　四大宗教の知恵と現代の感性が交差する、心温まる魂の対話。
　名前は消えても、言葉は永遠に残る――。
　残されたのは、一冊の本と、若き魂への遺言だった。