あこがれがかなうパワースポットのなかから選りすぐった川べりを訪れた主人公は、その身を蝕むほどの強いあこがれに耐えかね、体を前へのりださせた。一瞬の死。死後、魂となったあとの主人公の語り。どこへでも行ける状態になったのに、どこへ行けばいいかわからない。“わたし”が求めていたのは、あこがれていたのはなんだったのか。あこがれつづけるために必要なものを再び手に入れた“わたし”が再び同じ結末を辿ることのないよう、祈るのみだ。
川べりに立つ、“わたし”。モノローグで語られる、霊的体験。凍える情景の中にいて、矛盾するようにあまりにも瑞々しい感性。ある種の処女性、のようなもの。記録には残らない絶望。誰の人生にも、きっとこんな瞬間はある。あり続ける。あこがれや夢を不用意に語れなくなった世界で、それらはこんな風に、ホラーを通して語られていくのだ。素晴らしく、またかけがえのない作品でした。本当にありがとうございます。
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