最期

 母、望東子もとこが亡くなった。

 99歳まで生きた。大往生と言える。

 その四十九日に突然、見知らぬ青年が現れた。


「ぼくが、あのスーパーの駐車場で、あなたのお母さん(の右足)を轢きました」

「えっ」

「あの日、ぼくは、とっさに駐車場に放置されていた軽トラに飛び乗ったところ、うしろにいる、あなたのお母さんに気がつかずに――」


 母がスーパーの駐車場で(右足を)轢かれたのは55歳のときだ。

 目の前の青年の見た目から44を引くと、この世にまだ存在していないと思えるんだが。


「疑ってらっしゃるのですね。ぼくはタイムトラベラーなのです」

 青年は、ぼくの戸惑いを読んだかのように重大な告白をした。

「ぼくは絶滅したマンガを読みたくて、未来から来ました。ぼくの時代には話だけ伝わっている、竜の玉を七つ集めて投げると、しあわせの黄色い神獣が現れ、柱となって悪鬼を退治するというマンガです」


 絶対、それ、いろいろ混じっとるぞ。


「それにマンガを探しているなら、せめて駅前の本屋に行け」

「そうなんです。郊外のスーパーに転移してしまって、あわてて」


 それで母、望東子を轢いてしまったわけか。


 ともかく、犯人がわかってよかった。

 思った以上に、しょうもない理由だった。


 とりあえず青年が母、望東子に手向けてくれた饅頭を相伴させてもらった。


 ずっと未来の饅頭は、しょっぱあまい味がした。

 賞味期限は2660年3月14日とあった。


 残った饅頭は冷蔵庫に入れておこう。

 ぼくの子孫ならば、2660年まで大切に保管してくれる気がする。






             〈望東子、フォーエバー

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お母さんは後ろ向き。 ミコト楚良 @mm_sora_mm

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