泣いていい時は泣いたほうがいい

隅田 天美

今、心の姿が見えていますか?

 人の心臓に意志や思考があると初めて考えたのは、古代エジプト人らしい。


 実際、彼らの遺跡であるピラミッドから出た出土品を見ると現代医療にも通じる高度な知識があった。


 が、脳に関してはほぼ、無知に近かった。


 実際、ミイラ作りにおいて脳みそはかなり雑に扱われ、捨てられた。



 それから、幾星霜。


 ヴァレンタインでは(少なくとも日本において)ハート型のチョコレートが売れる。


 医学的に脳に心身のコントロールをしていると知っていても、咄嗟の動作などを見ると胸に手を当てることが多い。



 私は発達障害がこじれて極度のPTSD(心理的外傷)を患い、八年間治療に専念した。


(当時)三十代だった私は人生に対して「みんな、敵であり『仲良くしましょう』なんて社会的挨拶に過ぎない」と敵対心丸出しだった。


 実際、この後遺症は今でもあってイライラすると八つ当たりもしている。(最近は少ないけど)


--弱いのが悪い


--嫌なら強くなればいい


 それが行動指針だった。


 根本には昭和世代ラストが受けた不遇(って本人が言うのもどう?)な境遇がある。



 子供の頃。


 この時代はバブル景気で「弱者=悪」が当たり前の価値観で、不登校なんて「怠け者」と罵倒され、常に勉強を強いられたが、将来は安定しているとも約束されていた。


 が、中学校辺りからバブル景気がしぼみ始め、私が短大を卒業するころは「就職氷河期」であった。


『約束されていた安定した未来』は先の大人たちの嘘だったことに、今の四十代あたりは多かれ少なかれ絶望した。


 実際、今話題の『6080問題』などはこの辺りからの躓きが原因の人も多い。



 今、社会が求める人間性は「一人で何でも解決できる」スーパーマンではなく、「チームワークなどを大事にして自己管理ができる」人間である。


 派遣社員などで様々な企業で日雇い労働をしていて、その変化に気が付く。


 それに対応できない、ある業界(会社)は現在、斜陽産業になっている。



 さて、今、あなたの気持ちはどんな気持ちだろうか?


 辛くないだろうか?


 涙を必死に我慢していないだろうか?


『耐えれば海路の日和あり』と思っていないだろうか?


 確かに耐えることや辛抱することはとても大事であるし、戦わなきゃいけない。


 それこそ、八年間。


 それなりに自分の心を観察してきた。


 結果。


 出た答えがこれ。


「心が『無理』『辛い』と思うのなら無理させないで泣いて喚いて飯食って風呂入って寝る」



 年齢のせいもある。


 四十後半になった。


 もうすぐ、ゴールが見えてくる年齢だ。


 そして、図々しくなった。


 辛くなったりしたら人に頼ることにしたのだ。


 敵対するのではない。


 利用したほうが有効活用だと分かったから。


 これは、医療や職場でもそうだ。


 家族も使う。


 このことを言った時、意外なことに看護師さんや両親が泣いた。


--やっべ、嫌なこと言ったか?


 逆だった。


『よくぞ、そこまで言えるようになった』



 ある作家は言った。


「辛いことを『ゲーム感覚』で楽しめると力になる。そういう工夫をたくさんやりなさい」

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泣いていい時は泣いたほうがいい 隅田 天美 @sumida-amami

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