死と再生の狭間で選択を迫られる冒険譚
- ★★★ Excellent!!!
<第一部一章「流転の森 -1 選択肢」を読んでのレビューです>
死の直前から目覚め、不可解な選択肢を目の前にして立ちすくむ主人公。川に落ちて意識を失いかけた瞬間、青と黒の枠の選択肢に出会う描写から始まり、リスタートへの意識の変化や家族への思いが丁寧に描かれる。さらに目覚めた泉での状況描写、水滴や濡れたワイシャツの不快さ、呼吸の痛みなど、五感を刺激する描写が現実感を強く印象付ける。そして、水面越しに現れる白髪の少女との出会い、スーツの誤解から二重の選択肢が再び現れる描写に至るまで、読者は主人公と共に困惑と緊張を体感することができる。文章のリズムは緩急があり、心理描写と物理描写のバランスが巧みだ。
個人的に印象的だったのは、「──ぱしゃ。『ん?』 不自然な水音に、そちらへと視線を向ける。」の後、白髪の少女ヘレジナが覗く場面である。水音から視線を誘導し、距離感や緊張感を自然に描くことで、読者が瞬間的に場面に引き込まれる。その後の少女とのやり取りと、再び選択肢が現れる構造は、物語の世界観とルールを提示しつつ、次の展開への好奇心を巧みに煽っている。
読む際には、主人公の心理的混乱や五感描写に注意を向けながら、選択肢の意味やそれによる世界の変化を想像する楽しみ方が良いだろう。選択肢を目の前にした瞬間の迷いと緊張感を、自分自身の判断に置き換えて追体験することもできる作品である。