君の脳みそを食べさせて

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（216文字）

　思わず一気読みしてしまうほど心を掴まれる作品です。主人公が好きな先輩に告白する甘酸っぱい場面から幕を開けますが、先輩は返事と共に「君の脳みそを食べさせて」と、様子が変わってきます。
　自称ゾンビな先輩との交際風景は、どこか不思議で可愛らしいです。しかし物語が進み、ゾンビの真意に焦点が絞られると一気に物語りは鉄の味を帯びます。　　　　
　主人公は脳みそを食べられてしまうのか？ぜひ読んでお確かめください。

　高校生の黒野一希は憧れだった生徒会長の朱嶋理音に意を決して告白する。帰ってきた返事はあまりにもあっさりとした承諾。その淡々とした反応に喜びと同時に困惑に襲われる一希だが、理音は続けて言う。「その代わり……ひとつだけ、お願いがあるの。キミの、脳みそを食べさせて」と……。

　ゾンビになってしまい人間の心を取り戻すためには誰かの脳みそを食べる必要があると語る理音。だが一希も流石に脳みそを食べられるわけにはいかない。結局二人が合意したのは、一か月間試しに恋人となってその期間中に彼女の心を取り戻せられれば関係を継続するというもの。ただしダメだった場合は……。

　言動の端々から死の気配を漂わせ、そ…続きを読む

ただ素敵な先輩に恋をしただけなのに、どうしてこんなことに……。

ゾンビとか幽霊とか、エンタメホラーとして怖くて面白い題材です。
でも、この作品は「ゾンビ」を扱いながらも、あまりに現実にありそうで、ゾクゾクするヤバい怖さがあります。
そういう「ホラー」を楽しみたい方、ぜひ読んでみてください！

読み終えた後も、どこか悪い夢の中に囚われているような感覚に陥ります。夢なら醒めて欲しい……そんな気持ち悪さを体験できます。

このような作品が読みたかった。
押し潰されるような感情、苦しさが勝るのに先を読みたく展開。
いつしかそれが狂気となる。ですが人間的な心情の描かれ方も素晴らしい。

今のところ自分の中では最推しの作品。