薔薇と闇

　赤い薔薇を一輪。
　主人公は愛でるためでは無く、描くために買う。
　けれど、何度描いても納得できない。

　渇望は過去の面影と重なる。
　かつて想いを寄せた女性。
　結局、伝えられないままに彼女は亡くなってしまった。
　心残りを昇華させたくて描き続けるが……
　
　遂に、薔薇が枯れてしまった。
　完成させることができなかったのは、想いも絵も一緒だった。

　果たして彼に、救いは訪れるのか？

　創作に携わる方の琴線に触れる作品。
　必見です！

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（331文字）

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（117文字）

一目惚れ。あなたしかいない。
そんな意味を持つ一本の薔薇を、贈り物としてではなく絵を描くために購入します。

理想の出来に近づけない苦悩。
今は会えない大切な人を思い、キャンバスにぶつける色が、胸に迫ってきます。

創作に携わる方なら共感できる部分は少なくないかも。
ずっと眺めていたい極上の筆致を、ぜひ多くの方に鑑賞していただきたいです。

主人公が薔薇を細やかに描いていきます。

丁寧に、その度を尽くしても丁寧に。

しかし、気に入らない。

直ぐに理由は分からなかった。

そして、自らあることに気付くと、なぜ君に届かないのかが分かる。

ひとつの文字が燃えるように感情を表しています。

もしかしたら、現れるのかも知れない。

　主人公は散らかった部屋で、一人でキャンバスに向かっている。
　余裕がないのに、なけなしの金で買った赤い薔薇は、缶ビールに活けられていた。それだけで、一人の部屋は机の上だけは華やいで見えた。しかし、主人公の絵はいくら描いても完成しない。まるでキャンバスの上のその薔薇は、死んでいるように見えた。
　そうしている内に、薔薇は枯れていき……。
　しかしある時、主人公はこの薔薇の本当の色を見つけるのだった。

　生と死の間で懊悩する主人公が、ひたむきに絵に向かう姿が目に浮かぶようです。
　静かな部屋。枯れていく薔薇。生きることと死ぬこと。
　主人公男性の苦悩と想いを、ご堪能下さい。

　是非、御一読…続きを読む