この作品、やってることはすごく静かなんだけど、実はかなり残酷だなって。
言葉って、全部が救われるわけじゃない。
綺麗に羽ばたくものもあれば、形を変えて残るものもあって、
ただ溶けていくだけのものもある。
それを「いい話」に逃がさず、
そのまま見せてくれます。
「なるほど」が「ありえない」を溶かしていく話、かなり好きでした。
読み終わった後、また時間をおいて、
ココアを入れて、また戻ってきたくなる。
理解しようとすることって、こんなふうに暴力的で優しいんだなって思う。
静かなのに、ちゃんと刺してくる作品。
優しくなりたい時に読んで欲しいです。
言葉を形ある物のように取り扱う物語です。
寓意があるのかもしれません。
意味と音とを乖離させているのかもしれません。
表現のための表現のようにも思えます。
日用品を展示し、タイトルを付けてアートとする。
〝レディメイド〟という技法が現代美術にはあります。
本作も、あたかも言葉をまた別の意味に変換しているようです。
読む人は、きっと想像するのでしょう。
言葉は、落ちているときと瓶に詰められときは、どう違うのか。
詰められた言葉は何に変わるのか。
思いを巡らせると。
言葉を作っている文字や音、記号の形と記号の内容はもともと別の物なのです。
それを一揃いとして、みんな使っています。
ときに雑に。ときに丁寧に。
言葉は道具でもあるのです。
そのことが物語としてもよくわかります。
文字を置く場所と並べ方で言葉は変わっていく。その事が楽しめる物語なのです。
日々のひととき、ふとした折。
しとやかな楽しみを届ける物語です。
おすすめです。
「大丈夫」「またね」「明日から頑張る」「わたしなんか」「大好き」
落ちている様々な言葉を拾い上げ、優しく保護する少女のお話です。
カビが生えていたり、黒ずんでいたり、楽しそうだったり、凍りついていたり。
受け止められることもなく、色んな状態で道に転がっている言葉たちを、瓶に詰めて必要ならケアもして状態を良くしてあげる。
言葉が単なる文字と音ではなく、イメージを膨らませてくれる形容と感性が非常に楽しい。
そしてとても優しい作品。
この世には温かい言葉だけでなく、辛い言葉もあります。
でもその嫌な言葉に出会ってしまったとき、その言葉自身が少女の手によって救われる結末の物語を知っていたら少し気持ちが楽になるかな、なんて。
一話完結でほのぼのとして読みやすいし、言葉や物語の力を感じたことがある人には全員オススメの物語です。
人生では言葉にできる時と、言葉にできない時と、しないほうがいい時がある。
そんなことを読みながら考えるのも、それぞれの物語で丁寧に扱われる言葉の姿を目にするからなのでしょう。
作者の方は五感が優れた豊かな感性の持ち主なのだろうと、章を進めるたびに何度も感じました。
なにより文章にやさしさがあり、その行き届いた配慮によって、安心して身をゆだねることができます。
頭で書かれた文章というよりは、体幹を通じて湧き出る感性によって書かれたもの……そんな印象も受けました。
一話完結型なので、人によって好きになれる章があるかと思います。
そしてその言葉との出会いは、今日を気持ちのいい一日にしてもらえるはずです。
ふとした瞬間にこぼれ落ちた、誰にも言えない独り言。
そんな言葉たちがもし、瓶の中で美しい蝶や香りに変わるとしたら?
この物語の舞台は、街の隅にひっそりと佇む言葉の瓶詰め屋。
店主の少女が拾い上げるのは、カビの生えた決意や、泥まみれの大好き、そして鋭利な許せない。
それらは決して無理に治癒されるのではなく、ただ静かに、その言葉が望む形へと熟成されていきます。
一話完結で読みやすく、一息つくたびに心が洗われるような読書体験。
仕事や人間関係で少しだけ心が尖ってしまった夜、温かいココアを飲みながらぜひ開いてみてください。
読み終えたとき、あなたの周りの空気も、ほんの少しだけ甘くなっているはずです。