概要
崩れ落ちる記憶の渦が、味噌汁の具材としてあなたを飲み込む。
隆一は古書店で手に入れた「特別なみそ汁」のレシピに導かれ、奇妙な儀式を行うことになる。月明かりの下で汲んだ水を鍋に入れ、大切にしていた家族写真をそばに置き、素手で味噌を溶かして口にした瞬間、彼の中で眠っていた忌まわしい記憶がどす黒い濁流となって噴き出した。いじめに怯えた中学時代、受験に失敗した絶望の朝、祖父の死に際して味わった喪失、信じていた友人の裏切り、幼馴染との取り返しのつかない衝突。それらが立て続けに彼を苦しめ、やがて体までも溶かし始める。最後の希望だった母の面影さえも、不気味な笑みへと歪みながら消えていく。崩壊の果て、部屋に残ったのは怪しい鍋と汚れたレシピ本だけだった。