読書とは誰にも邪魔されず、ひとりで楽しむもの。
本の世界に浸れるのはページを開く自分だけ。
ページをめくる度、次なる展開に心を弾ませる。
ところが、この作品は、ただ本を開くだけでも、本の内容に心を弾ませるだけではないときた。
本ならばひとりで読める。
本来の読書にはないひとりではないというノイズ。
ページをめくるペーパーノイズがあろうと、実際には、ノイズとは違う別の音が展開されていく。
もちろんのこと、本の世界があるように、現実たる世界もある。
甘くない世界で本のページが進むように、進んでいくふたりの関係。
確かに最初はひとりだった。
今はひとりではなくなっていた。
本を開いたのが先か、心が開いたのが先か。
どっちが先かは割愛とします。
ただ言えるのは、電子書籍があろうと、こればかりは紙の本がなければ生まれぬ出会いである。
恋を知らなかった“本好き男子”と、明るくて真っ直ぐで、ちょっぴり不器用な“ギャル後輩”。この二人が少しずつ距離を縮めていく過程が、とにかく丁寧で、胸に沁みます。
派手な展開ではなく、あくまで「日常の中にある小さなときめき」を積み重ねていくタイプの作品でじわじわ温度が上がっていく感じです。
視線が合った瞬間の微かな幸福、隣に座ったときの温度、ページをめくる音に混ざる緊張と喜び、そしてお互いの“好き”が形になっていく瞬間の瑞々しさ。
甘いのに押し付けがましくなく、ちょっと優しい世界に触れたような気持ちになれる作品です。
恋愛小説が好きな方はもちろん、普段読まない方にもおすすめの一作です。