レビューの多さを見れば、この作品が『抜群の傑作』であることは瞬時にお分かりになるだろう。迷うことなく、是非お手に取って頂きたい。
言いたいことはそれだけなんだけど、ちょっとだけ言葉を繋ぎたい。感動を発散させたい衝動に、抗うことができないのだ。
人は本来、自らの為に生きればよい。
ところが往々にして、それでは満足できなくなる。美味いものを作ったら、自分で食べるだけでなく、誰かに食べてもらいたくなる。そのひとの笑顔を見てしまったら、もうおしまい。この歓びからは逃げられない。喰うために作っていたはずなのに、彼らの笑顔のために腕を振るいたくなってしまう。
人間とは、そんな奇妙な一面を持つ動物なんだ。
でもその奇妙さは、なんだかとっても温かい。涙が出るほどに、柔らかい。
そんなことを、しみじみと思い出させてくれる。これは、そんなお話なんだ。
第一話「孤独な鶏のトマト煮込み」
都会の本社から田舎の工場へ左遷された男は、工場の近くにある食堂で食べた鶏のトマト煮込みの美味しさに驚く。
料理を作ったのは、上の前歯がふたつとも欠けている女、ノラだった。
その後も「イワシのマリネ」「チーズタルト」「クズ野菜のスープ」と、料理名が入ったタイトルが続き、ノラの作った料理と共に、男とノラと工員たちとの関係が変わっていく様子が丹念に描かれています。
そして最終話「アザだらけのりんごタルト」
もう……ぜひ読んでとしか言えません!感動を分かち合いたいと強く思います。
大人が満足できる素晴らしい短編小説です。
ぜひ、読んでみてください!
孤独な鶏。群れから外れたイワシ。臭いチーズ。クズ野菜。そしてアザだらけのりんご。
各話のエピソードタイトルに並んだ食材です。
本作には、これらを使った美味しい料理が登場し、出世コースを外れて左遷された主人公に新たな気付きを与えていきます。
匂いや食感までも伝わってくる筆致は、五臓六腑に沁みるほど。
絶品の料理を破格の値段で振る舞う料理人・ノラは、竹を割ったようなキャラクターで非常に魅力的です。
そんな彼女にも、実は暗い過去があり——
どんな豪華なフルコースよりも、野菜の切れ端を煮込んだだけのスープが、人生を変えるご馳走になる。
これは人生の道を踏み外した人々が、新たな居場所を得て、生きる希望を見つけていく、再生の物語です。
どうかあなたもぜひ、この珠玉の短編を味わってください。
50歳を過ぎて人生の帰路に立たされた主人公の男。
ある人の心のこもった料理と言葉や生き様に触れる事で、安定した未来を取るか、溢れてきた感情に従うかの葛藤に迫られる。
男はどの道を選ぶのか?
こんなふうに書くとありふれた物語を想像してしまうかもしれないけれどとんでもない。
舞台設定、登場人物の発する言葉やその描写、周りの風景など、ひとつひとつが丁寧に練り込まれていて心が震える。
そしてこの作品に出てくる料理が人の営みと溶け合って、より一層の旨みを増している。
人間らしい善や悪。過去の傷や胸に痛みを抱えながらも、素の自分に立ち返り、営みを続ける尊さを教えてくれるような素敵な作品です。
エンディングで涙ぐむこと必須。爽やで幸せに満ちた感動を覚える作品です。
とにかく読み終わったあとの余韻のすごい。
読んだ方なら、なんとも言えない感動を、この作品から得るのは間違いありません。
柊さまの短編は常に素晴らしいのですが、その中でも最高傑作だと思います。
本当に読んでよかった。
さて、物語の主人公は都会にある大企業から地方の工場へ左遷され、孤独と無力感の中、うつうつと日々を過ごしています。
そんな彼がふと足を運んだのが、「安くて美味しい」という評判の食堂、『ノラの食堂』でした。
気さくな彼女の料理は絶品です。
読んでいるだけで、匂いたってくるような料理の数々が描写されています。
そして、彼が工場長をする工員たちが楽しく食事する美味しいと評判の店でもありました。
その店に出会ったことで、主人公はこれまでの人生を振り返ります。
この作品は普通の人の普通の人生について、偉そうに語るのではなく、日常の中の小さな出来事を通して深い感情を描き出す短編ドラマです。
お読みください。最高ですから!!
左遷されて地方にやってきた主人公氏から、都会人故の無意識なプライドや地方へのマウント意識が見え隠れしていて、いい感じに「嫌なやつ」感が出ています。
そんな「嫌なやつ」の主人公なので、折角いいお店を教えてもらったのに、飯を食うにしてもぼっちめしです。
そんな「ぼっちめしスタート」な本作ですが、本当に食事シーンが象徴的なんですよね。
各話ごとに揺れ動いていく主人公の現状や立ち位置を、上手く表現しています。
そして、忘れてはならないのが食堂のおかみさん、ノラさんの存在。
歯抜けの彼女はとっても料理上手で、皮肉屋の主人公ですら素直にその腕を認める程なのですが、物語の中盤で思わぬ秘密が語られることになります。
おそらく酸いも甘いもたくさん見てきたのであろうこのノラさんの言葉が、また実に深く象徴的なのです。
これが誤魔化しばかりの主人公に刺さる刺さる。
一種の爽快感すらあります。
さて、本レビューを書いている時点では、残念ながらまだ最終話が公開されていません。
その結末が実に楽しみな本作、読むなら今ですよ。