最後まで読んでのレビューです。
まず一言、非常に面白いです。
ジャンルはSFとなっていますが、普通に現代ドラマとか恋愛でも良さそうです。
架空の世界が舞台ですが、そこには、現実の社会の問題や、衝突等が丁重に書かれていて、世界設定がしっかり練り込まれている重厚感を感じます。
それが、リアルを感じさせるんですが、舞台は殆ど小さな灯台のある島だけ。
出てくる人物も、ほぼ主人公とヒロインだけ。偶に主人公の上司が少しと言う構造です。
そこで、文化や国の違いなどをお互い感じているのですが、案外人間の問題はシンプルかもしれません。
足るを知る事が出来れば、後は愛があれば良いのではないか?と言うメッセージを勝手に感じ取りました。
非常にスローペースで進むので、昔ながらの良き洋画を思い出しました。
大人な恋愛、現代ドラマを見たい人にオススメです!
物語に、こんな豊穣な感情を持たせることができるんだと、感動しました。
最後まで、先が読めなかったです。
孤独を好む灯台守の語り。
変わらない毎日に飛び込んできた、偶然。
葛藤の末、灯台守である彼が下した決断。
そして・・・・・・。
広くはない空間にこもる声が再生されるような、
独特の語り口。それは朗読のようでもあり、どこか作者様によるナレーションを聞いているようでした。しんと心に響く声です。
人の難しさを描きながら、正解、そして幸福を模索する、人の苦しさ、愛おしさを描く。
難しい作業。このように静かに丁寧に紡ぎ出し、この読後感に導いてくださった作者様の努力と力量に、感服いたします。
ジャンルを超えた魅力が、心震わす結末が。貴方様を待っています。
世界の片隅を照らし続ける灯台。そこで灯台守として長く働いている主人公。
ある日、そこに一人の女性が流れ着き……。
緻密な織物のように丁寧に紡がれた物語は、「SF」というジャンルの中で、人の細やかな心の動きや秘めた想いを鮮やかに描き出しています。
異なる国、異なる環境で生まれ育った主人公と女性を結びつけたのは、一冊の本。
その本が鍵となって、本を読むこと、物語を書くことの意味や喜び、さらにその先にあるものが広がっていく。
このあたりは、読むことや書くことが好きな方なら、きっと心を揺さぶられると思います。
そして二人は、やがて。
現実世界で起きていることにも通じるような問題に、鋭く切り込む場面もありながら、優しく「人」に寄り添う物語。
素敵な作品を読ませてくださり、ありがとうございました。
読みたいものを読み、書きたいものを書く。
こちらを覗いてくださった皆様は、おそらくこのどちらか、または両方をなされている方であると存じます。
読みたくないものを、と書きたくないものを、であるとしても、それを選ぶ権利は、ほぼご自身に。
本作の主人公、軍籍の灯台守の住む世界は、そうではございません。
孤独は安らぎ、貴重な書物を読む時間は、代えがたきもの。
そこに漂着した女性は、彼と同じ書物を宝物としていて。
書くこと、読むこと。それは国籍や思想、お互いの立場を超えるのか、否か。
ご興味をお持ち頂きましたら、どうぞ、ご一読なさってご確認くださいますようにお願いいたします。確信を持ちまして、お薦め申し上げます。
1803年に常陸国に漂着した虚舟(うつろぶね)の中には箱を抱えた女がいた。
女は箱を手放そうとしない。
きっと不義密通をはたらいたのだ。男は国で斬首され、女は海に流されたのだ。そう述べる者もいた。
異国の女が抱えて離さなかった箱。その中には男の首が入っていたのだろうと。
女を乗せて海を流れてきた虚舟。
舟を描写したものを見れば、その形状はUFOのようである。
このように、女を乗せて漂着する舟というものは、それだけで人の想像をかきたてる。
灯台守として島に籠もっている男は或る日、海原を超えて外国から陸に辿り着いた女を引き上げる。
国を違える彼と彼女。二人には或る共通点があった。同じ本を聖典のように心の中に抱きしめて生きてきたのだ。
わけありの素性を持つ軍属の男はこの一冊の本に導かれるようにして孤島の防人となり、支配者階層に生まれた女は恵まれた暮らしと決別して小舟で波間に乗り出した。
二人が読みふけった本の中に篭められていたメッセージは、とても古臭いものだ。
しかしその古臭い紙の本が読む者たちに訴えかけたものは、彼らの脳を貫き、北極星のように冷たい光でかがやいた。
最先端なものにしか価値はない。やたらと他者を否定する声の大きなものだけに利得があり、すべてはAIがやってくれる便利で高度で洗練された完璧な世界。
そんな時代にあって、その古ぼけた本はまだ呼びかけている。風に消えかけながら、変色して今にも破れそうな頁の中から、小さな灯火を燃やしている。
人間であることを止めないで。
命のカンテラを掲げることを止めないで。
活字が描いてみせた夜空の星座。
それに触れた者は誰でもそこを目指して未知の明日へと歩いていくのだ。
大古の人々が等しくそうであったように。