恐怖は、音もなくやって来る
- ★★★ Excellent!!!
ホラーは未知であるが故に怖いのだと個人的には思っているので、内容については一切触れずに本作の内包する"恐怖"という名の魅力について語りたい。
1999年に超低予算で制作された異色作「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の大ヒット以降、ホラーというジャンル界隈に於いてはモキュメンタリーが幅を利かせている。代表的なもので言えば「パラノーマル・アクティビティ」だろうか。
本作はそういった意味では流行に逆行しているのかもしれないが、だからこそモキュメンタリーに食傷気味な方、古のおどろおどろしい和風ホラーを求めている方には刺さると思う。
物語の鍵となるのは、水──心霊マニアならばピンと来るだろう。古来より霊は水場に姿を現すと伝えられているからだ。即ち水は、此岸と彼岸とを繋ぐ門のようなもの。
我々が日常的に恩恵を受けている水……それが深く昏い闇の奥底にて邪悪を孕み、やがて不定形の恐怖として地表へと這い出し、そして何もかもを忘れ去った愚かな者たちへとその牙を剥くのである。
未知だからこそ怖い。理不尽だからこそ恐ろしい。恐怖とは──ホラーとは、本来そうあるべきもの。未知なる恐怖というものを、本作は高い完成度で表現している逸品である。
水という名の不定形の恐怖……果たして、惨劇を止めることは出来るのか。