舞台は現代の神戸。ホラーを超えたダークファンタジー

カクヨムの性質上、作品には何らかのタグを付けなければいけないのですが……こちらの作品、「ホラー」のジャンルで片付けてしまうわけにはいかない多くの要素を持っています。

確かに、連続惨殺事件に端を発する冒頭ではありますが、物語が進むにつれ、舞台となる神戸の震災やとある一族の宿業、果ては惨劇を引き起こす者の出自までもが複雑に絡み合い、物語にえもいわれぬリアリティーと奥行きをもたらしています。
つまり、ホラーに留まらず、サスペンスやミステリー、群像劇や現代ドラマの側面もあるんです。更には、ちょっと笑えてしまう場面まで。

それでいて、軸足をしっかりとホラーに置いているところも、また本作の面白さを増長させています。タイトルにある「水に棲むもの」が這い寄る様はとにかく恐ろしく、登場人物達が命を狙われる場面では、スクロールを進めるのに緊張してしまうほどです。
個人的には、最終章の展開には酷く胸を打たれました。そしてラストも、これ以上はない帰結です。

神戸を舞台に繰り広げられる、宿命と怨嗟が紡ぐ物語。ホラーが好きな方は勿論、テンプレのホラーに食傷気味の方は是非、ご一読下さい。

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