存在しない住所って、もうその時点で怖いよね?
- ★★★ Excellent!!!
番地まで詳しく書かれていて、いかにも実在しそうな住所がタイトルになっているが、こんな地名は存在しない。それにもかかわらず、インターネット上にはこの住所に関する不自然な噂があちこちで囁かれている……そんな謎の住所の目撃情報を集めたモキュメンタリーホラーが本作品だ。
匿名掲示板のログや、女性週刊誌の記事、テレビの速報テロップ、ラジオに投稿されたリスナーからのお便りなど、様々な形でこの住所が話題に挙がるのだが、どの話題でも死者や行方不明者が出たり、あるいは不審者が現れたりして読む者の不安を掻き立てていく。このタイプの異なる目撃情報の一つ一つが実に生々しくて、これだけでも充分読み応えあり。
そして本作では、小林という人物がこれらの情報を集めているのだが、彼はただ情報を集めるだけで満足せず、実際に三重県を訪れて、この架空の住所に秘められた真実に徐々に近づいていく。つまり本作はモキュメンタリーホラーであると同時に、一人の人物が怪奇現象の正体に迫るミステリー小説でもあるのだ。とある住所が出てくる以外には、何の関連性も見当たらない断片的な目撃情報が、一つの流れに収束していく様子が素晴らしい。
「不条理なものは真相がわからない方が恐怖感が高まる」という人もいれば、「ちゃんと謎を解き明かしてくれないとモヤモヤした気持ちになる」という人もいるだろうが、後者のタイプの人にはぜひ本作をオススメしたい。
(じわりと恐怖が染み込んでくるモキュメンタリー4選/文=柿崎憲)