冤罪を主張する無期懲役囚……複数の記述から浮かび上がる真実とは?
- ★★★ Excellent!!!
モキュメンタリーという手法は、ホラーのジャンルで採用されることが多いのですが、実はミステリージャンルとも相性が良いと思うんですよ。というのもミステリーを犯人当てのゲームとして捉えた場合、推理小説が持つ物語的要素がノイズに感じられるケースもあるじゃないですか。しかし、モキュメンタリー形式を採用することで、登場人物の心情描写を最小限に抑えて、客観的な情報だけで謎や伏線を読者に提示できるわけです。
本作では、冤罪を主張する殺人容疑で有罪判決を受けた人物の依頼で、一人の新聞記者が、事件の調査に乗り出します。その際の手がかりとなるのが、事件に関する新聞記事、公判調書、そして事件関係者との取材時の録音記録といった、主観を挟まない客観的情報ばかり。しかし、それらの断片から浮かび上がる情報はどれも被告に不利なものばかり。これをどう覆すのかが大きな見どころ。
こうした事実情報を追うばかりだと、物語が地味で退屈な印象になってしまいそうですが、本作では描かれる謎そのものの面白さもあって、最後まで退屈せずに読むことができました。ミステリーとしての完成度はもちろん、モキュメンタリーという手法の更なる可能性を示した点でも評価したい作品です。
(じわりと恐怖が染み込んでくるモキュメンタリー4選/文=柿崎憲)