魔力なき王女が挑む、知と信念の文明改革ファンタジー。

『滅亡王女は世界を変えたい』レビュー
── 魔法の世界に、知と経済で革命を──
レビュアー:ひまえび

『滅亡王女は世界を変えたい』は、いわゆる“異世界×技術チート”系の構造を持ちながら、読んでみるとその内実は非常に知的で戦略的、そして何より思想的な重層性を持った作品です。

主人公・ノアコアードは、魔力を持たぬ王女。
この設定自体は王道ですが、彼女が選んだ「魔法に頼らず、超科学と商業で国家と対峙する」というアプローチが新鮮で、序盤から明確な知的刺激を受けます。

特筆すべきは、“強者を否定する物語”ではなく、“支配の仕組みを根本から組み替える”という視点で描かれている点。
彼女が持つのは剣でも魔法でもなく、知識と交渉力と市場の論理。
敵を倒すのではなく、「構造を無力化する」ことで変革を試みる様子に、思想と理性の力強さを感じました。

ノア自身のキャラクターも秀逸です。
冷静で合理的で、そしてどこか寂しさを引きずった視線の奥に、「小さくても穏やかな暮らしを求めている」という本音がある。
そのギャップがとても人間的で、応援したくなります。

加えて、彼女を取り巻くキャラクターたちとの関係性も魅力的。
彼女の才能を信じて支える仲間たち、帝国側の存在感、超古代文明との邂逅など、いずれも物語に深みと変化をもたらしています。

そして何より──
本作は、「娯楽でありながら、読者の思考を試す物語」でもあります。
“魔力が強い=正義”という前提を揺さぶり、別の論理体系を築くという構造は、単なる逆転劇を超えた説得力を持っています。

言い換えればこれは、「思考する読者にこそ届くファンタジー」です。
軽快な語り口に安心しつつも、ふとページの奥に“現代社会への問い”が潜んでいる──そんな読み応えを持った、密度の高い一作でした。本作は、いわゆる“なろう系”文脈に乗せつつ、そこから頭一つ抜けた思想性と構築力を示している作品です。

思考する読者に届くべき作品であり、企画的にもカクヨムコン通過は当然の結果だと思います。続きを楽しみにしています。

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