海底より呼ばう声あり 其は古神なりや

徹頭徹尾、美しい世界。
新月の夜の黒。海の青。砂浜の白。鳥居の赤。
明瞭な色彩のなか。
声が来る。

〝赤児の泣きたるが如しと謂ふ〟

存在するだけで畏れを呼ぶもの棲み処への階が開き。
声が来る。

〝赤児の泣きたるが如しと謂ふ〟

人間は自身より巨大な存在を畏怖する生き物である。畏怖する物を奉る生き物である。

そして、有為転変の人の身。
世の移ろいとともに古い神を祀ることを止めることとも、儘ある。

だが万古不易の存在は忘れない。祀られたことを覚えている。
時がくれば、現れる。

人間と隔絶した存在が、ただ在る。
それを知ることが、怖い。
抗えないことが、怖い。
呑まれるのが、怖い。

幻想の畏敬に取り込まれる厳かな恐怖が
ここにある。

諸兄に、閲覧を推奨する。

その他のおすすめレビュー

木山喬鳥さんの他のおすすめレビュー705