名前と存在は聞こえてはおりましたが、ここまで詳しく、丁寧に、直に触れたご体験をもからめながら語られた文章によって、このビルのことを知ることができたのは幸いだと思います。ついにホテルとしての活躍が叶わぬまま湖畔に佇みつづけ、骸をさらされた『幽霊』に向けた、優しき鎮魂の言葉なのでしょう。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(140文字)
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(40文字)
とある廃墟のルポルタージュです。語り出しからビルの成立ちを遡り、その建物に纒わる来歴や噂を集めて語った物語が本作です。ただ不気味な廃墟、というだけではありません。その場所が地元では、どんな存在であったのか?語られて行くうちに現実感を持ってその建物の存在が浮き上がるようです。怪異や心霊が関与しなくとも噂や評判が物語を作り出す。そして建物のイメージがドンドン作られて、さらに上書きされる。あまり他に類を見ない創作ではないでしょうか。不気味な建物の来歴書である本作。とうぞご覧ください。面白いですよ。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(155文字)
引き込まれるような語り口で事実が語られていき、建物の歴史を通して昭和の時代がよみがえります。
昭和の時事ネタを織り交ぜつつ、どこか懐かしみのある語り口は読みやすく本格的。見事なルポ風の文章を読んでいくと、「これは本当にあった話なのか、作者のフィクションなのか、もしかして怪談……」といった境界線がわからなくなり、最後まで読み進めてしまう力がある。読了後、思わずいろいろ調べてしまいました。
今や何にも活用されず、ただそこにたたずむかのように朽ち果てていく物体。それを廃墟というなら、その廃墟たるモノには、それにふさわしい歴史というものが、必ずある。そのことが、淡々とつづられた事実と時代情勢をもとに語られている。キャーのわーの怖いよー!そんな感情を揺さぶるものばかりが、ホラーではない。真のホラーとは、何なのか。そんな問いかけを受けざるを得ない物語である。
幽霊なんてものはでてこない。悪人なんてものもでてこない。只々、その地の、その土地の歴史と史学を語るのみ…。にも関わらず、それだけにも関わらず、なぜか背筋を伝う恐怖と恐懼を含む冷や汗。調べながら、探しながら読むことを是非におすすめしたい一作品です。
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