美しい叔母の飲むレモネードには美しい彗星が格納されている

“空のグラスは、すぐさまレモネードの予測値で満たされる。”
全編が陶酔感のある叙情的な表現に満ちた本作の中でも、この一文が特に好きです。「美し」くてSF的。この一文を味わうためだけにでも読む意義があると感じました。読者の多様な楽しみ方を許容する包容力の大きさを感じる作品です。
そもそも「私」とは誰なのでしょうか。解釈は無意味な気もしますが、
・叔母は愛するあまり、あるいは嫉妬のあまり、姪の「私」を殺した。「私」は幽霊のような意識だけの存在。
・「私」は天才エンジニアの叔母が作ったAI。(だから【窓】からしか外界を認識できない)。
あるいはその両方?などと想像しながら楽しませていただきました。
叔母が飲み下しながら生きてきた、愛と汚辱のレモネード。そこにすべてが詰まっている気がするけれど、ただそのきらめきを眺めることしかできない。この小説は彗星の格納されたレモネードそのもののような気がします。

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