幻想×怪奇×謎解き
- ★★★ Excellent!!!
幻想怪奇という言葉が、ここまでしっくり来る作品はなかなかありません。
事件そのものは猟奇的で残酷でありながら、描かれているのは「誰が悪いのか」という単純な裁断ではなく、閉じた社会の空気、役割に縛られた人間の弱さ、そして見ないふりをされた罪です。
探偵役でありながら真実を暴くだけでは終わらないルナの在り方が、この物語を単なるミステリやホラーから一段深い場所へ引き上げています。救いは完全ではなく、正義も万能ではない。それでも「忘れられないもの」を拾い上げようとする姿勢が胸に残りました。
重く苦い題材を扱いながら、文体は美しく、幻想性と皮肉、静かな優しさが同居しています。
読後、しばらく月と鐘楼の影が頭から離れません。綺譚蒐集という枠組みが、今後どんな物語を見せてくれるのか、強く期待しています。