前世の相棒はシャチ。再会から始まる異世界冒険譚

シャチのトレーナーとして生きた前世の最期と、公女ルーナとしての現在が静かに重なっていく導入がとても印象的な作品です。
イルカショーを見つめる何気ない場面から、言葉にできない既視感と涙へと繋がる描写は丁寧で、前世の記憶が感情として先に滲み出る構成が美しく感じられました。

家族やメイドとのやり取りは温かく、貴族ものらしい品格を保ちながらも、ルーナの年相応の無邪気さが自然に描かれており、読者が安心して物語に入り込めます。その穏やかさの中で訪れる海の異変と転落は鮮烈で、再会の瞬間に一気に感情を掴まれました。

シャチのアルスは“守護獣”というより、かつての相棒そのものとして描かれており、戦闘シーンですら信頼と絆が前面に出ている点が魅力です。
異世界転生と相棒再会を、優しさと迫力の両立で描いた、心に残るファンタジーだと思います。

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