夕陽の屋上で、“神様”と目が合う

  • ★★★ Excellent!!!

病院の屋上、異様に綺麗な夕陽。導入だけで空気が決まっていて、読む側の呼吸も自然と静かになります。
昴が「理由は分からないけど屋上へ行く」流れが押しつけがましくなくて、気づけばこちらも同じように階段を上っていました。
自称“神様”の少女は、言っていることは突飛なのに、語り口が淡々としているせいで逆にリアルに感じる。
昴が警戒しつつも引き返せない感じも含めて、「怖い」じゃなく「気になる」に落ちていくのが上手いです。
『火』では願いの“制限”が具体的に提示されて、ファンタジーがふわっとしたまま終わらず、輪郭が出てくるのも良かった。
最後の「一瞬目を逸らしたら消えていた」が、夢っぽさというより、夕暮れの不確かさそのものみたいで余韻が残ります。