テーマ小説

雨竜ゆづ

1.『こんな夢を見た』

 脈絡のない夢だったの。私は貴方と空を飛んでいて、柔らかな手をこれでもかっていうくらい掴んでいた。二人で空に沈んで、雲は暖かかった。現実で雲なんて言うのは誰よりも無慈悲なほど冷たい水と氷の礫の塊だって言うのに。でも、夢だって気づかなかったの。夢って不思議よね。どれだけ非科学的でありえないことが起きたってそこでは全てが現実なんだから。


 こんな夢もあったわ。二人で美術館の中を探検するの。たぶん、ルーブル美術館だった。まあ、ルーブル美術館なんて行ったことはないし、何があるかも知らないから、名前のよく分からない壺とか絵とかがいっぱい置いてあるんだけど。そこで閉館後にね、鬼から逃げるの。きっと鬼は警備員なんだろうけど、その時は鬼に見えたのよ。手を繋いで逃げて笑って、本当に楽しかった。


 あるいはこんな夢はどう? 二人でおんなじ小学校に通うの。私たちは高校で出会ったからお互いの小さな頃の姿なんて写真の中でしか知らないけど、やっぱり二人でかくれんぼをするの。私すぐに貴方に見つかっちゃった。貴方って鬼役が上手なのね。


 ……出演料を払え? 確かに、私の夢には貴方の登場回数が余りにも多い気がするわね。でも、貴方も私との夢を見ていたんじゃないの。……その沈黙が答えね。お互い様じゃない。私は貴方が大好きだし、貴方は私が大好き。それでいいじゃない。良かったじゃないの。


 ふふ、話しすぎ? 確かに貴方の話も聞きたいわ。可愛らしい貴方の声、小鳥の声は実際は聞いたことないけれど、きっと貴方の声はそれより軽やかね。ねえ、今度は貴方の夢の話を聞かせてよ。良いでしょう。貴方の夢の中の私はどんななの? ねぇ。


♪


 あら、呼ばれちゃった。じゃあ、今度会った時は聞かせてね。本当だからね。

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