概要
十年運んだ鞄を、今日から運ばない。坂の下に、彼女が立っていた。
坂の上の高校まで、四百メートル。
俺は十年、毎朝その坂を自転車を押して上ってきた。前カゴには、向かいの家の幼馴染・桜井日和の鞄。隣には手ぶらの日和。小一の春からずっと、それが当たり前だった。
十月のある日、日和が言った。「蓮と付き合うことになった。だから、もう運ばなくていい。……ていうか、頼んでないし」
そうか、と俺は言った。その夜、店の工具で前カゴを外した。
翌朝、坂の下に、鞄を抱えた日和が立っていた。
俺はカゴの無い自転車を押して、横を通り過ぎる。頼まれていないなら、運ばない。それだけのことだ。
彼氏は鞄を持ってくれないらしい。雨の日、日和は傘を二本持って坂の下に立っていた。「……頼んだら、運ぶ?」
運ばない。カゴは、もう無い。
――十年の当たり前を自分の手で壊した幼馴染が、頼む側に回る話。
俺は十年、毎朝その坂を自転車を押して上ってきた。前カゴには、向かいの家の幼馴染・桜井日和の鞄。隣には手ぶらの日和。小一の春からずっと、それが当たり前だった。
十月のある日、日和が言った。「蓮と付き合うことになった。だから、もう運ばなくていい。……ていうか、頼んでないし」
そうか、と俺は言った。その夜、店の工具で前カゴを外した。
翌朝、坂の下に、鞄を抱えた日和が立っていた。
俺はカゴの無い自転車を押して、横を通り過ぎる。頼まれていないなら、運ばない。それだけのことだ。
彼氏は鞄を持ってくれないらしい。雨の日、日和は傘を二本持って坂の下に立っていた。「……頼んだら、運ぶ?」
運ばない。カゴは、もう無い。
――十年の当たり前を自分の手で壊した幼馴染が、頼む側に回る話。