概要
別れても、こいつの散歩は二人でやる。それが唯一の約束だった。
三年同棲した彼女・結城真帆と別れた日、一つだけ決まらなかったのが柴犬のモナカの行き先だった。どちらも譲らず、「共同親権」で手を打った。毎週土曜の朝、公園の入口で三十秒だけ会い、リードを渡す。彼女はそのたびに「元気だよ」「新しい人がいる」と、ひとつだけ嘘をつく。モナカの通院を交代するうちに顔を合わせる時間は増え、やがて彼女の海外赴任が告げられる。出発は九十日後。モナカをどちらが引き取るかを、それまでに決めなければならない。これは、別れた二人が、犬のリードの両端で黙っている話。
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