最近、作品を読み進めてくださった方から、
「エックスというキャラクターの発想源はどこにあるのか」
と尋ねられることがありました。
せっかくの機会なので、ここで一度、
このキャラクターの設計について整理しておこうと思います。
結論から書くと、
『エックスの最初の着想は、ロックマンXの主人公 X にあります。』
ただし、参照しているのは外見や能力、物語構造ではなく、
あくまで『キャラクター設計の思想そのもの』です。
***
ロックマンXのXは、アクションゲームの主人公としては非常に異質な存在でした。
彼は単なる戦闘用ユニットではなく、
* 思考することを許され
* 迷いや躊躇を抱え
* 力を行使することの結果を理解している
そうした前提を持つキャラクターとして設計されています。
本作が強く惹かれたのは、
「強さ」そのものではなく、
『思考することを許された兵器』という立ち位置でした。
***
本作に登場するエックスは、
その思想を、別の環境に移植した存在だと考えています。
もし、
思考することを許された存在が、
理想や天真さを保てない世界に置かれたとしたら——
その先に現れるのは、どのような人物なのか。
本作におけるエックスは、
「正しいかどうか」を問い続ける役割は、
彼自身の内側ではすでに処理されています。
彼は決断を下す側ではなく、
『下された選択を、現実として実行する側』です。
***
なお、エックスというキャラクターに
「血や肉」、つまり人間的な質感を与える際に参考にしたのは、
ゲーム版というよりも、
『岩本佳浩先生による漫画版『ロックマンX』の描写でした。』
岩本版のXは、
単なる操作キャラクターではなく、
不安や戸惑いを抱えたまま戦場に立つ存在として描かれています。
その未熟さや揺らぎ、
それでも前に進もうとする姿勢は、
エックスというキャラクターに
人間的な温度を与えるうえで、大きな指針になっています。
***
エックスという名前は、性格を示すためのものではありません。
未知数であり、
交換可能であり、
物語の最終的な意味付けを担わない存在。
その距離感こそが、このキャラクターの役割です。
彼は理解されるために存在するのではなく、
他の人物や世界の選択を、可視化するために配置されています。
***
創作の構造上、エックスは明確な役割も担っています。
抽象的な議論やシステムの話が続いたあとでも、
物語を「今、何が起きているのか」という行動レベルに戻す。
エックスは、そのための
『実行可能な線』として設計されたキャラクターです。
そのため、意図的に詳しい内面描写や
大きな感情曲線は与えていません。
***
ロックマンXという作品は、
本作にとって重要な参照点の一つです。
しかし、同じキャラクターを書きたいわけではありません。
本作が描こうとしたのは、
『思考することを許された存在が、
現実の重さを引き受けた後、どのように行動するのか』
という一点でした。
エックスは、その問いに対する一つの回答です。
(エックスの初期イメージ)
