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「この20年で最高の犯罪小説」byスティーブン・キング

「この20年で最高の犯罪小説」――スティーブン・キング



この煽り文句で興味持たない本好きいるんでしょうか? 偶然書店でこの文句が書かれた帯を見かけて、そのまま小説を衝動買いしてしまいました。

こんな最大級の賛辞が寄せられた本は、アメリカのベストセラー作家であり、犯罪小説の王と評される稀代の作家、ドン・ウィンズロウ氏が最近上梓した短編集、『ファイナル・スコア』です。前評判通りめちゃくちゃ面白い本で、夢中になって一気読みしてしまいました。

と、いう訳なんで、具体的にどのあたりが面白かったので、個々の短編小説に関する感想を適当に書きなぐっていきたいと思います。

ネタバレは極力控えますが、多少してしまっているので注意。

『ファイナル・スコア』
短編集のタイトルにもなってる目玉の物語です。あらすじとしては、齢60のじじいが悪友達と共に銀行強盗する物語です。
……が、はっきり言って退屈でした。いい歳こいてなに馬鹿な事してんだか。みたいな冷めた感想しか持てなかったんですよね。いくら妻の為にお金が必要だったからといっても、犯罪なんかに手を染めるなよ。
個人的に、こーゆー如何にも浅薄なアメリカ的ロマンティズムに溢れた、犯罪を美化して描く作品は苦手です。他の短編はどれもこれも粒ぞろいでしたが、表題にもなってるこの作品だけはどうしても受け入れられませんでした。
常々思うんですが、やっぱ日本人とアメリカ人の価値観って、大分違いますね。

『サンデー・リスト』
ファイナル・スコアとは正反対で、こっちは日本人好みの青春物語です。
あらすじとしては、いい加減な両親の元に育った主人公が、1970年代のアメリカの片田舎を舞台に、せっせとバイトに励んで、大学進学のための費用を稼ぐ話です。
いやな奴だと思って嫌ってた男が、最後の最後で主人公に手を差し伸べてくれるのがほっこりしました。ベタと言えばベタな展開ですけどね。あと主人公の両親は土下座して主人公に謝れ。
終始小さな町を舞台にしているので、閉塞感のある物語になっていますが、それが逆に主人公の心象を顕しているようで、良い演出になっていました。ハッピーエンドで終わってくれるのも嬉しかったです。第一級品の青春小説だと思います。

『北棟』
飲酒運転で人をひき殺してしまったぼんくらの従弟を助ける為に、警官である主人公があの手この手をつくすお話。
ちんけな犯罪を題材にした、ちんけな規模の物語なんですが、主人公の心理描写が卓越しており、感情移入されっぱなしでした。身内が犯罪者になった時の気分って、どんな感じなんですかね……想像もしたくないです。
”有罪になるのは間違いないから、せめて比較的優遇されている刑務所の棟に入れてやろう”と考える主人公の家族愛に泣かされます。

『ほんとの話』
全編が二人の粗野な男による、くだらない会話のみで構成された、実験的な物語です。物語の性質上、ストーリーなんてあってないようなものとなっています。イメージとしては、タランティーノが監督した作品に出てくる、登場人物の下らない会話のシーンをずーっと続けてるタイプの作品って感じです。
小説でこういう感じの物語読むのは初めてで、新鮮で楽しかったです。自分でもこういう類の実験的作品を書いてみたいなーなんて読書中思いました。

『ランチブレイク』
ハリウッドのわがままなビッチ系女優を、私立探偵がお守りするという、コメディタッチのお話。如何にもカリフォルニアにいそうな、ちゃらいサーファー風の風貌で、それに併せたライフスタイルを送っているにも関わらず、それでいて知的なたたずまいがあるという、訳の分からないキャラクター設定の主人公がそもそも面白い。ヒロインのビッチもいい味だしてます。日本人が書いた物語では、絶対に出てこなさそうなキャラクターですね。悪役の変態ストーカーもいいキャラしてました。
私はドン・ウィンズロウ氏に対して、お堅い作風の作家というイメージを持ってたんですが、こんな作品も書こうと思えば書けるんですね。レンジの広さに驚かされました。

『衝突』
個人的にこの短編集の白眉です。ストーリーとしては、不慮の事故で人を殺してしまった真面目な男が、刑務所内でなんとか生き抜こうとするお話です。
アメリカの刑務所内のあまりにも劣悪な環境が精緻に描写されており、読んでて胃が縮こまる思いがしました。自分がこんな環境下に放り込まれたら、一か月も生きていられないと思います……。
この物語マジで面白かったです!ストーリー展開が全然読めなくて、「この後どうなるんだー!」って感じで食い入るように読んでました。
しかしアメリカの刑務所って、マジでこんな感じなんですかね……。これに比べりゃ日本の刑務所なんて天国だろうな。



総評
私はドン・ウィンズロウ氏の名前は今までにも何度か聞いた事があったのですが、氏の作品をちゃんと読んだのは今回が初となります。彼の作品ってシリーズものが多いので、中々敷居が高いところあったんですよね。題材もどれもこれも、日本人にしてみると縁遠い世界のものばかりだし。
でもこの短編集がめちゃくちゃ面白かったので、シリーズものも追ってみたいなーって思って、Amazonで中古品の本買っちゃいました。これから楽しみに読ませてもらいます。

それにしても、スティーブン・キング氏がお勧めする本に外れないですね。彼の審美眼には脱帽されっぱなしです。

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