時は全てを破壊する
久しぶりにヤバすぎる映画見つけてしまいました。フランス映画界の鬼才と呼ばれるギャスパー・ノエが監督した、2002年公開の映画、『アレックス』です。
マジで胸糞過ぎる。自分は相当数の映画を観てる方だと自負しているのですが、ここまで胸糞悪くなる映画観たの初めてです。色々と衝撃が抜けきらないので、ここに感想殴り書いていきたいと思います。
以下ネタバレしながら感想書いていきます。エグい表現あるんでご注意を。
本作のストーリー自体は至ってシンプルで、悪漢にレイプされた上顔面をずたずたにされた恋人の姿を見て、怒り狂った主人公が復讐するお話です。
こんなストーリーの映画、70年代のアメリカとかでは散々作られましたし、(実際作中で”B級映画の真似事のつもりか!?”という台詞が出てきます)特に目新しいものなんてありません。しかしその奇抜過ぎるカメラワークと、時間を逆行して物語れるストーリー、そして9分間にも及ぶ壮絶なレイプシーンが、観客の心を深く抉り、この映画を永遠に忘れ去れない記憶にしてきます。
この映画、公開当時色んな意味で相当話題になったようで(そりゃそうだ)特にカンヌ映画祭でこの映画が発表された時などは、会場は阿鼻叫喚の地獄に陥り、途中退場者が続出したという伝説を持っているようです。”映画史上最も衝撃的な9分間”という触れ込みは全く誇張じゃなかった。この手の類の煽り文句で誇張じゃなかったフレーズ、生まれて初めてみましたよ。
とまあ、外側だけ聞くと完全にゲテモノ映画のそれなんですが、この映画、結構考察しがいのある作品な気がします。
映画の冒頭(つまり時系列的には一番最後になります)で、本筋には何の関係も無い、謎の二人組の男が会話しているシーンからこの映画は幕をあけます。
「時はすべてを破壊する」
「連中は俺達の事をメフィストと呼ぶが…」
「悪行なんてものは存在しない。ただ行為があるだけだ」等々、まるで悪の哲学者のような妙に凄みのある二人の台詞は、この映画のテーマを観客に真っ向からつきつけてきます。
邦題にもなっているヒロインのアレックスを取り巻く二人の男、主人公のマルキュスとピエールですが、彼らは本当にアレックスの事を愛していると呼べるのでしょうか?マルキュスがアレックスの事を褒める時はいつも、彼女の身体についてしか言及しませんし、ピエールに至っては「なんで俺とセックスした時はイカなかった癖に、こんな猿以下の知能の男(マルキュスの事)と付き合ってられるんだ?」とかデリカシーが無さすぎる質問をアレックスに投げかけてくる始末。そんな二人の仲を取り持って、アレックスはやんわりと優しく二人を諭しながら生きていました。
そんな彼女にも”幸福”が訪れます。自分が妊娠しており、マルキュスの子を宿している事を知るのです。
しかしそんな幸福も一瞬で瓦解します。アレックスに残ったのは地獄。しかもマルキュスは復讐に失敗し、ピエールもレイプ加害者とは関係ない、赤の他人を勘違いで惨たらしく殺害するという末路を迎える訳ですからね。
なんだこの救いの無さすぎる物語。監督は鬼か悪魔ですか。
更にエグイのが前述した通り本作のストーリー展開。普通だったら起承転結というように、物語が時系列の古い順から語られるのが常道ですが、この映画だと最初にクライマックスを配置し、そこからどんどん過去にさかのぼっていきます。観客はいきなり地獄に叩き落とされた、何の罪もないアレックスが非常に聡明で美しく、かつ優しい女性であり、しかも妊娠していた事を知っていく構成になっていくのです。
えぇ…(ドン引き)
よくこんな非人道的な映画作れたもんだなおい!本当に忌々しい作品でした。でもムカつく事に観客の興味をそそり続けるその手腕は見事の一言で、余計にムカつかせてくれます。お陰でオリジナル版と日本語吹き替え版で二回合わせてみる羽目になりました。
ちなみに本作の悲劇のヒロインであるアレックスを演じたモニカ・ベルッチは2002年当時の時点で世界的大スターで、その美貌から『イタリアの宝石』といわれていたらしいです。しかも主人公を演じているヴァンサン・カッセルとは、リアルでも夫婦関係にありました。
えぇ…(更なるドン引き)なんでこんな役引き受けたんだよ。
…ともかく総括すると、ここまで観客に感情移入させる事が出来る本作は、”不快な名作”と称して過言ではないと思いました。