https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/2912051600988285411
「人文で何を学ぶんだ」
そう聞くとキリュウは答えた。
「人間とその歴史と、心かな」
どうにも若く青い香りのする受け答えだったが彼も年頃であるから、俺は「そうか」と祝福した。将来は文壇の世界で思想書とも哲学書とも小説ともつかない本を発表したいと口を緩ませていた。
キリュウのその本が金になるのかどうかは分からない。ただ、好きな事に向かって進んでいけるのはいい事だと思う。十七歳で難関大学に入り、目指すべき道を目指すというのは、おおよその人間にとってあまりに果てしない、輪郭すら見えない生き方なのだから。
俺は、なかったな。夢も努力も。