第四章を公開しました。
この回でも、何かが劇的に変わるわけではありません。
物語が大きく動くことも、関係が明確に進むこともないまま、ただ、音になる直前の気配だけが、静かに積み重なっています。
昼の街に溢れている雑音。記憶の底に沈んでいる地方の風景。夜のスタジオで、まだ誰のものにもならない旋律が形を取りかける時間。
星野澪は、音を生み出しているというより、音になる前の層に身を置いているだけです。
感情を語ることも、過去を説明することもせず、ただ、温度や距離、沈黙の重さの中に耳を澄ましています。
完成したとは言えない、何も始まっていないわけでもない、その曖昧な中間にある時間を、そのまま置いています。
掴めそうで掴めない感じ、何かが生まれる直前の張りつめた空気だけが残る感覚です。
もし読後に、音のない余韻だけが残ったなら、この話は意図した高さに触れています。
この物語は引き続き、答えや意味を示すよりも、まだ名前のつかない感覚のそばに留まることを選んでいきます。
旋律になる前の時間に心当たりのある方は、今回も同じ静けさの中で読んでいただけたら嬉しいです。